スタッフのモチベーションをあげ、主体的な人材に育てるマネジメントのコツとは?

歯科医院経営にも厳しい環境変化が押し寄せ、「予防・口腔ケアの仕組み」や「患者教育からの高付加価値診療」、「チーム医療による生産性向上」など、高度なマネジメントを必要とする取組みにチャレンジする歯科医院が増えてきています。

このコラムでは、こうした高度な取組みの成功に欠かせない「スタッフを主体的な人材に育てる日常のマネジメントのコツ」をご紹介いたします。

目次

歯科医院にありがちなスタッフマネジメントの悩みと解決アプローチ

多くの歯科医院の院長先生から、以下のような悩みを相談されます。

・決めたルール通りにスタッフが動いてくれない。

  • もっと自発的に働いてほしい。
  • もっと効率よく診療を回したい。

そして、これらを解決するアプローチとして院長先生の口からよく出てくる案が、以下のような対応策です。

  • スタッフの待遇を改善しようか?
  • スタッフに外部研修に参加してもらおうか?
  • 給料を上げて採用するスタッフの質をあげようか?

「しかしちょっと待ってください。本当の理由を掴んでから対応策を決めましょう」ということで、私たちは「問題がどこにあるのか?」をリサーチします。

まずは、院長先生のお話に加え、診療実績データや、実際に医院運営に携わるスタッフから直接話を聴き、本当の問題点、そして解決策を探っていきます。

スタッフのモチベ―ションが低い本当の原因は?

モチベーションの低いスタッフ

このリサーチで多くの医院に見られた意外な原因が、実は「院長がスタッフのモチベーションを下げる言動を知らず知らずのうちに行っている」ということでした。

もちろん、スタッフは院長と、立場、責任感、知識、経験、見識も違うため、偏った意見であることがほとんどです。ですから、スタッフの受け取り方が正しいか?という観点から言えば、一蹴すべき意見であることも往々にしてあります。

しかしながら、院長が思い描くビジョンや方針を、具体的に実現していくのは、こうしたスタッフ一人一人の「行動」です。

その意味で、スタッフの声に耳を傾け、どうしたら院長が望む行動を自主的に行ってくれるようになるのか?を一度しっかりと考えることはとても大切なことです。

では、実際にどのような声が多いのか?

スタッフの意見を聞いてみると・・・

「相談しても聞いてもらえない。」

「提案をしても、何も取り上げてもらえない」

「決まりやルールを決めても院長先生がやってくれない。」

というものでした。

その結果、「院長の指示をされたことだけを無難にこなそう」という諦め。

そして「医院のことを自分事として捉えられない」という反応につながっていることが多かったのです。

話を聴き、提案を取り上げることで重要感を与える

話を聞いている院長

ここである企業の事例をご紹介します。

ある中小企業が、不況や社員の退職などで業績が急速に悪化していました。

そこで社長は「社員の声を聴く」と宣言し、行動を開始しました。

多くの支店、営業所を社長自ら訪問し、社員から直接話を聴くというものでした。

その結果、会社は、新しいサービスを始めたわけでもなく、昇給したわけでもなく、社員のモチベーションが上がり、業績がV字回復しました。

その社長がしたことは、「社員の話を聴き、提案、改善点はできることは実施し、出来ないことはできない、今はやらない。と明確にしたこと」でした。

上記の事例から「自分の提案をきちんと聞いてもらえている」ということが、社員のモチベーション向上につながること。

逆に言えば「提案、相談しても聞いてもらえず、自分が重要なことに関わっていると感じられないこと」が、社員を「指示待ち人間」にする大きな理由と考えるられるのではないでしょうか。

やらないという明確な方針を示すこともマネジメント

やらない取り組みを決める歯科院長

スタッフからの提案、相談は、時には解決できない、実行できないこともあります。

しかしそれを聞いたままにせず、「できるものは実施する」「できないものはできない」と経営判断し、その理由を明確に示してあげることで、スタッフは納得してくれるものです。

業務改善や新しいルールを決めた後で、諸事の理由により実行を継続することが難しくなることもあると思います。

その時には理由や背景をきちんとスタッフに示し、納得感を生むプロセスを経たうえで、思い切って「やらない」と判断し、方針を示すことが大切です。

うやむやにしたり、「いつの間にかやらなくなってしまった」ということが続くと、スタッフの士気を下げ「言われたことだけを無難にこなす、指示待ち人間」にしてしまいます。

「経営判断」や「マネジメント」と聞くと、設備投資、借入、採用、給与条件など、判断すると変更できないような大きな事案を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、スタッフのモチベーションに関わること、またスタッフを主体的な人材として育成していくためには、意外にも、こうした日々のマネジメント(小さな業務上のやり取りや判断)が大きく影響しているのです。

「決めたことを実行する」ことで生まれる「信用」

さて、次に「決めたことは実行する」ことの大切さについて、事例を一つご紹介します。

とある医院様では、アポイントを1時間単位で取っていましたが、院長先生の手が空く時間が多く、診療効率向上の観点からアポイントを15分、30分、45分と細かく管理し、予約を詰めて取ると決めました。

スタッフからは、患者様に〇時15分などわかりにくく間違えが多発すると難色を示しましたが、院長は、スタッフの声をまずはしっかりと受け止めたうえで、「自分から、次回予定の申し送りとして、予約時間をしっかり伝えること」を約束し、スタッフに協力を要請しました。

院長先生が予定時間を伝えるという約束をしっかりと実行していくことで、スタッフもその時間で予約を取るようになりました。

さらに、院長先生がしっかり実行している姿勢を見て、受付では患者様が間違えないように『わかりにくい時間ですが、〇時45分ですのでお間違え無いように』と注意を促すなど、積極的に改善に協力してくれるようになりました。

院長が「やる」と決めたことを実行することは、スタッフからの「信用」につながります。

院長が「やる」といったことをやらないことは、「院長の言ったことは信用できない」というメッセージとして届きます。

この「信用」は目に見えず、お金にも換算できないため、その重要性は忘れられがちですが、マネジメントの基礎として、もっとも重要なものと言えます。

そしてこの「決めたことを実行する」「約束を守る」という至ってシンプルな取組みを日常のマネジメントで徹底することで、スタッフとの信頼関係が構築され、スタッフが主体的に動いてくれる土壌が醸成されていくのです。

まとめ

このコラムでは、スタッフのモチベーション高く、主体的な人材に育てるため「日常のマネジメントのコツ」として以下の3つのポイントをご紹介しました。

● スタッフの声を聴く

● 方針を明確に示し、しっかり説明する

● 院長自身が決めたことを実行する

少々耳に痛い指摘も含まれていたかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。

※不平不満など、特に解決策を求めているわけではなく、単に「話を聞いてほしい、私の気持ちを分かってほしい」という共感を求めていることもあるため、そういった場合はスタッフの話をまず聞いてあげるだけでも状況が改善するということも最後に付け加えておきたいと思います。

みなさまの歯科医院経営の繁栄をお祈りしております。

この記事の解説者

Mr.歯科事務長

髙橋 信吾 Shingo Takahashi

北海道札幌市出身 血液型A型

歯科業界歴11年目。 歯科器材・材料販売の歯科ディーラーにて3年間、営業部門、事務部門ともに経験。

営業部門では、営業マンとして『新規、既存営業』『新規開業、移転・改築のお手伝い』『スタディグループ運営のお手伝い』を行う。

事務部門では、『売上管理』『材料在庫管理体制構築』を行い、業務フロー確立、在庫管理ソフト入替、会計システム連動などの業務を部門管理者として実施。

その後、訪問歯科サポート会社にて7年間、経営企画、海外進出、内部監査、技工部門管理者など経営、管理を経験する。

提携医院のコンサル、新規事業企画推進、管理部門強化等、歯科企業において経営と現場をつなぎ、企業発展に取り組む。

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