設備投資は診療効率ではなく医院ブランド化で考える

その投資、誰の満足のためですか?

歯科医院を経営していると、ユニットの故障や最新機器の登場など、設備投資を検討する場面が必ず訪れます。その際、多くの院長が診療効率の向上を基準に判断しがちですが、効率だけを求めた投資は、意外にも成果が見えにくいものです。

本コラムでは、設備投資を効率化の手段ではなく、医院のブランド価値を高める投資と捉える重要性についてお伝えします。

目次

効率化は医院の内側を整える投資

新しいチェアやCT、滅菌器などを導入すれば、確かにチェアタイムの短縮やスタッフの負担軽減に繋がります。これらは医院の内側を整える上で非常に重要な価値です。

しかし、効率化はあくまで医院の中で完結する価値観とも言えます。どんなに仕事が早くなっても、その恩恵は患者様には見えにくく、直接的な感謝や評価には結びつきにくいのが現実です。内部の満足を高めることは大切ですが、それだけでは医院のブランド形成には至りません。

ブランドは外に伝わる価値:ある医院の英断

同じ設備投資でも、視点を変えることで外に伝わる価値、すなわちブランドを創り出すことができます。ここで、ある医院が下した決断をご紹介します。

開業10年を機に、その医院では同予算でユニットを増設するか、最新の器具洗浄機を導入して滅菌を強化するかで悩んでいました。スタッフからは効率重視のユニット増設を推す声が上がりましたが、院長が選んだのは滅菌の強化でした。

理由は、当院は清潔・安全を患者様への約束にしているのだから、その約束を形にしようというものでした。結果として、手洗いのムラがなくなり作業が標準化されただけでなく、スタッフが診療に集中できる余裕が生まれ、医院の姿勢が患者様に伝わるようになりました。目に見えない滅菌という工程が、信頼というブランドに変わった事例です。

口腔内スキャナーを導入したA医院の失敗とB医院の成功

最新機器である口腔内スキャナーを例に、目的の違いがもたらす結果の差を見てみましょう。

A医院:診療効率を目的にしたケース

作業効率を上げたいという理由で導入したものの、操作に不慣れな初期段階ではかえって時間がかかり、現場に混乱を招きました。患者様からも機械を触っている時間ばかりが長いと不満が出てしまい、投資額に見合う成果が得られませんでした。

B医院:医院ブランドを目的にしたケース

こちらは診療効率ではなく、説明の質を高めてブランドを構築することを目的に導入しました。スキャン画像をモニターで患者様と一緒に見ながら、噛み合わせの現状や治療計画を視覚的に共有しました。

患者様が自分のお口の状態を深く理解できる体験を提供したことで、成約率が向上し、最新技術で丁寧に説明してくれる医院という口コミが広がりました。同じ機械でも、目的と使い方の設定次第で成果は180度変わります。

効率は内側の整備、ブランドは外への約束

これらの事例から学べるのは、投資の性質の違いです。

効率投資とは、医院内部の満足を高めるための整備です。対してブランド投資とは、医院外部に対して信頼を届けるための約束です。

滅菌設備やスキャナーの導入は、結果としてスタッフの効率も上げますが、より重要なのは、その設備を通じて医院が何を大切にしているかというメッセージを外に発信できるかどうかです。理念を形にすることが、ブランド投資の本質と言えます。

ブランドを生むのは共感される仕組み

医院ブランドは、単なるロゴや内装の綺麗さで作られるものではありません。掲げている理念を患者様が実感できる仕組みがあること、そしてスタッフが誇りを持ってそれを語れることが重要です。

滅菌や洗浄を単なる裏方の作業ではなく、清潔・安全という理念を象徴する重要な工程として捉え直したことで、スタッフの意識と患者様の印象が共に変わりました。これこそが、設備をブランドで考えるということです。

設備投資の判断を変えると、医院の未来が変わる

新しい設備を導入する際は、以下の問いを自分に投げかけてみてください。

  1. この投資で、どのような理念が形になるのか
  2. その価値は、スタッフや患者様にどう伝わるのか
  3. 5年後、この投資が医院の信頼をどう支えているか

この問いに明確な答えがあれば、その投資は単なるコストではなく、医院の価値を創造するブランド投資へと進化します。

ブランド投資としての設備導入5ステップ

設備投資を成功させるための実践的なステップを整理します。

  1. 医院の理念・価値観を明確にする 精密治療、予防重視、安心安全など、何を大切にする医院なのかを言語化します。
  2. 理念に合った設備を選ぶ 精密さを売りにするならマイクロスコープ、快適さを謳うならユニットの座り心地など、理念に直結する投資を行います。
  3. 目的をスタッフと共有する なぜこの設備を入れるのか、患者様にどのような体験を届けたいのかを全員で理解します。
  4. 見せ方をデザインする 院内掲示や説明トーク、ホームページでの紹介など、価値を伝えるための仕組みを設計します。
  5. 共感される仕組みとして継続させる 導入をゴールにせず、日常の対応や雰囲気の中でその価値を育て続けます。

理念を仕組みにするためのマネジメント

滅菌器一つとっても、効率を狙うかブランドを育てるかで医院の未来は大きく変わります。理念を掲げるだけでなく、それを日々の仕組みとして根付かせるには、現場の動きを理解したマネジメント機能が欠かせません。

設備は医院の理念を形にする装置であり、その装置を活かすのはマネジメントです。この両輪が揃うことで、医院の内側と外側の両方の価値が強固なものになります。

設備投資を機に、医院のブランドを再構築したい、あるいは理念を仕組みに落とし込むための具体的なサポートが欲しいとお考えの方は、Mr.歯科事務長サービスの活用についてお気軽にご相談ください。

この記事の解説者

Mr.歯科事務長

髙橋 信吾 Shingo Takahashi

北海道札幌市出身 血液型A型

歯科業界歴11年目。 歯科器材・材料販売の歯科ディーラーにて3年間、営業部門、事務部門ともに経験。

営業部門では、営業マンとして『新規、既存営業』『新規開業、移転・改築のお手伝い』『スタディグループ運営のお手伝い』を行う。

事務部門では、『売上管理』『材料在庫管理体制構築』を行い、業務フロー確立、在庫管理ソフト入替、会計システム連動などの業務を部門管理者として実施。

その後、訪問歯科サポート会社にて7年間、経営企画、海外進出、内部監査、技工部門管理者など経営、管理を経験する。

提携医院のコンサル、新規事業企画推進、管理部門強化等、歯科企業において経営と現場をつなぎ、企業発展に取り組む。

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