
本コラムでは、厚生労働省が掲げる医療ビジョンや日本の医療制度から、今後、歯科医院経営に求められる重要な対策の一つである「継続来院率を高める対策」について4つの具体的なポイントをお伝えしていきます。
厚生労働省が掲げる医療ビジョン

厚生労働省が掲げた2035年に向けた医療ビジョンから読み解いてみると、今後の日本の医療制度は
- 量の拡大から質の改善へ
- インプット中心から患者の価値中心へ
- 行政規制から当事者規制へ
- キュア中心からケア中心へ
- 発散から統合へ
という新しい考え方への転換を目指していることが明確になっています。
これにより、予防医療へのシフトや医療機関間の連携強化が今後もより一層、促進されることが予想されます。
この流れは、既に保険点数などにも反映され始めていますが、今後も一層、予防医療への取り組みを進める必要がありそうです。
歯科医院における継続来院率向上のための施策

歯科医院の経営において、定期検診受診率を高めるための施策は、患者様のニーズに対応し、長期的な関係を築くことが特に重要です。
単に治療の延長線上では予防のための来院動機を強めることができません。
そこで以下に、患者様と長期的な関係を築く上で重要になる要素のうち、ユニークな取り組みをされている施策例を記載したく思います。
1. リコールシステムの工夫

予防に定期来院される患者様を増やしていく上では、予約システム等の自動リマインド機能を持つ仕組みの導入は非常に有効です。
予防中断の多くは、うっかり忘れによるキャンセルから発生するケースが70%以上になると言われており、「予約を思い出してもらう仕組み作り」は今後より一層重要になっていきます。
また、「キャンセルや予約変更なく、定期検診に◯回来院されたら特典が受けられる」「ご家族全員で来院していただいている方には物販◯%割引」など、医院独自のリワードプログラムや割引特典などを用意することで、定期的な来院によるベネフィットを感じてもらいやすくなります。
その結果、来院動機が強まり、キャンセル率が下がったといった事例も多くあります。
いきなり始めるのは難しい、という場合には、期間限定のキャンペーンなどの形でトライアルし、好評だったものを継続していくといった方法でテスト導入する方法がお勧めです。
さらに、リコールシステムを効果的に運用するためには、患者様一人ひとりの属性や来院履歴などを分析し、パーソナライズされたリコールを行うことが重要です。
例えば、年齢や性別、ライフスタイル、口腔内の状態などを考慮し、それぞれの患者様に最適なリコール内容やタイミングを設定することで、より効果的に定期来院を促すことができます。
具体的な例
- 若年層の患者様:SNSやメールなどを活用したリコール
- 高齢の患者様:電話やハガキなどによるリコール
- 多忙な患者様:夜間や土日も対応可能なリコール
- 歯周病リスクの高い患者様:1~3ヶ月ごとのリコール
- 虫歯リスクの高い患者様:4~6ヶ月ごとのリコール
リコールシステム導入のメリット
- 定期来院率の向上:患者様に定期的な来院を促し、予防意識の向上に繋がる。
- キャンセル率の減少:リマインド機能により、予約のキャンセルを減らすことができる。
- 患者様との長期的な関係構築:継続的なリコールを通じて、患者様との信頼関係を築くことができる。
- 医院の収益安定化:定期的な来院による収益の安定化が見込める。
リコールシステム導入のポイント
- 患者様の属性に合わせたリコール方法:年齢やライフスタイルなどを考慮し、最適なリコール方法を選択する。
- 分かりやすいリコール内容:リコールの目的や重要性を分かりやすく伝える。
- 定期的な見直し:リコールシステムの効果を定期的に見直し、改善を図る。
2. 教育と啓発活動

既にカウンセリングなどを通して、患者様に予防についての情報提供を行っている医院様も多いかと思いますが、院外での地域講習などを行うことで、予防に関する知識のなかった患者様に関心を持っていただけます。
例えば、デイケアセンターなどに問合せを行い、口腔衛生教室を無償開催したい相談などをするなどが一例ですが、地域の健康促進のための啓蒙活動は医院のブランディングにも効果的です。
実際にそういった活動から今まで来院されなかった層の新患来院を獲得できたケースも多く見受けられます。
その他にも、
- 地域住民向けの健康セミナーや講演会を開催する
- 保育園や幼稚園で歯科検診や歯磨き指導を行う
- 地元の新聞や雑誌にコラムを掲載する
- ホームページやブログで予防に関する情報を発信する
- SNSで口腔ケアに関する情報を発信する
など、様々な方法で地域住民への啓発活動を行うことができます。
教育と啓発活動のメリット
- 地域住民の口腔衛生意識向上:口腔衛生に関する知識や予防の重要性を広めることができる。
- 医院の認知度向上:地域住民に医院を知ってもらう機会を増やすことができる。
- 信頼関係の構築:地域住民との信頼関係を築くことができる。
- 新患獲得:新たな患者様の獲得に繋がる可能性がある。
- 地域貢献:地域社会への貢献活動として、社会的な責任を果たすことができる。
3. 来院しやすい環境づくり
歯科医院を、「治療を受けに来る場所」としてだけではなく「リラックスできる場所」「お話を聞いてもらえる場所」など、プラスアルファのイメージを持っていただく取り組みは、患者様の定期来院の動機を強めます。
また、患者様のニーズをアンケートなどで定期的に汲み取り、形にしていく取り組みができると、よりロイヤリティの高い患者様を増やすことにつながります。
具体的な例
- 院内環境:
- 清潔感のある待合室
- リラックスできるBGM
- アロマを焚いたり、観葉植物を置く
- キッズスペースの設置
- バリアフリー対応
- Wi-Fiの完備
- 雑誌や絵本、漫画などを置く
- サービス:
- 丁寧な接遇
- 待ち時間の短縮
- プライバシーへの配慮
- わかりやすい説明
- 患者様一人ひとりに合わせた治療計画の提案
- 定期的なアンケートの実施
- 患者様の声を反映した改善
来院しやすい環境づくりのメリット
- 患者様の満足度向上:快適な環境と質の高いサービスを提供することで、患者様の満足度を高めることができる。
- 来院頻度の増加:患者様が来院しやすい環境を作ることで、来院頻度を高めることができる。
- 口コミによる評判向上:良い口コミが広がることで、新規の患者様が増える可能性がある。
- スタッフのモチベーション向上:働きやすい環境を作ることで、スタッフのモチベーションを高めることができる。
4. 歯科衛生士やスタッフのトレーニング
当然ながら、治療中のトラブルに対する迅速な対応ができたり、接遇力向上、臨床力向上を図ったりすることで、患者様からの信頼度を向上させることができます。
医院への信頼度が向上することで、紹介数の向上や自費提案時の納得感向上など、様々なメリットが得られると思います。
具体的な例
- 接遇トレーニング:
- 挨拶、言葉遣い、表情、身だしなみなど、基本的な接遇マナーを身につける
- 患者様とのコミュニケーションスキルを高める
- クレーム対応の研修
- 臨床トレーニング:
- 最新の治療技術や知識を習得するための研修
- 症例検討会や勉強会の実施
- 資格取得の支援
スタッフのトレーニングのメリット
- 患者様満足度の向上:質の高い治療と接遇を提供することで、患者様の満足度を高めることができる。
- スタッフのモチベーション向上:スキルアップを支援することで、スタッフのモチベーションを高めることができる。
- 人材の定着率向上:教育体制が充実していることは、人材の定着率向上に繋がる。
- 医院の質の向上:スタッフ全体のレベルアップにより、医院全体の質を高めることができる。
- リスク管理:医療事故やトラブルを未然に防ぐことができる。
まとめ
本コラムでは、今後の歯科医療に求められる継続来院を高めるための取組みについて、様々な施策をご紹介させていただきました。
これらの施策をどの程度導入していらっしゃるかは様々でしょうが、これらを参考に、医院オリジナルのサービスモデルを構築することが、患者様のニーズに応えることになると同時に、今後の歯科医院経営における成功の鍵の一つになるでしょう。
このようなマネジメントスキルが必要な取り組みを、院内スタッフだけで進めるのは難しい、時間がかかりすぎるという場合には、当社サービス「Mr.歯科事務長」の利用を検討いただくことも解決策の一つです。
医院様の固有の状況を踏まえ、歯科医院の発展と繁栄を全力でサポートいたします。

この記事の解説者
Mr.歯科事務長
信田 学 Manabu Nobuta
神奈川県出身 血液型O型
大学在学中、インディーズレーベルよりCDデビューを果たし、音楽活動によるボランティアや多くの人々とのコミュニケーションを通じ実社会の厳しさや人の暖かさを実感する機会にも恵まれました。
一部上場企業での勤務や、ITベンチャー企業での分社立上げ・運営を経験後、歯科医院向けコンピューターシステムのコンサルティング営業に従事し、日本全国の数百歯科医院を担当。No1営業の達成経験やマネージャー経験を活かし、より深く医院の成功実現に寄与したいとの想いからMOCALに転職を決意!
休日は一児の父、2匹の猫親として日々奮闘中。色々な役割の中で、学びを得て成長しています。