ただのツールと侮るなかれ!オリジナル小冊子がもたらす「医院マネジメント」

ツール作りが組織を変えるきっかけになる

スタッフが院長と同じ方向を向いてくれない、医院の強みが患者様に伝わっていない。こうした悩みを持つ院長は少なくありません。解決策は多岐にわたりますが、実は「オリジナル小冊子の制作」というプロセス自体が、極めて有効なマネジメント手法になります。本コラムでは、ツール制作を通じてスタッフが自律的に動き出し、医院が活性化した実例とそのポイントを解説します。

目次

1. 組織を動かすマネジメント手法としての「小冊子」

多くの医院でパンフレットや資料が作成されていますが、その多くは「情報の羅列」に留まっています。しかし、制作過程にスタッフを巻き込むことで、小冊子は単なる説明ツールから、スタッフの意識を一つにするマネジメントツールへと進化します。

私の担当医院でも、「どうすればスタッフがやりがいを持って働けるのか」という課題に対し、小冊子作りを導入しました。これはデザインを外注して終わりにするのではなく、スタッフが院長の想いを言語化し、患者様の視点に立って情報を再構築するプロセスを重視した取り組みです。その結果、スタッフが自らの仕事に誇りを持ち、イキイキと働く組織へと変貌を遂げたのです。

2. 成果に直結するスタッフマネジメントの3つの要諦

単に綺麗な冊子を作るだけでは組織は変わりません。成果を出すためには、制作から運用に至るまで、以下の3つのポイントを意識する必要があります。

理念を「腹落ち」させ、行動基準へ昇華させる

院長のこだわりや医院の方針は、スタッフにどの程度浸透しているでしょうか。ここで言う浸透とは、暗記している状態ではなく、スタッフがその目的を自分のこととして理解し、日々の行動に反映できている状態を指します。

理念が浸透しない最大の理由は、スタッフにとってそれが「他人事」だからです。小冊子作成の際は、あえてスタッフが院長にヒアリングを行う形をとるのが効果的です。院長がなぜこの治療にこだわるのか、どんな未来を患者様に届けたいのか。スタッフが自分の耳で聞き、自分の言葉で原稿にまとめる過程で、院長の想いが「腹落ち」し、それがやがて医院の文化という揺るぎない原動力に変わっていきます。

患者様視点の「価値の翻訳」による接遇の向上

スタッフが院長の想いに共感できたら、次はそれを患者様にどう伝えるかを徹底的に考えます。ここで重要になるのが、専門用語を一般の言葉に置き換える「翻訳」の作業です。

小冊子は、患者様とのコミュニケーションを深めるための架け橋です。制作チームには「特定の患者様(固有名詞)」を思い浮かべてもらい、その方に伝わる言葉選びを議論してもらいます。このプロセスを繰り返すことで、スタッフは自然と患者様の立場に立って物事を考える習慣が身につきます。結果として、小冊子の内容だけでなく、ユニットへの誘導時の声かけや次回予約の説明など、日々の接遇スキルまでもが劇的に改善されるという相乗効果が生まれます。

動画や図解を活用した視覚的アプローチの工夫

情報の伝え方にも工夫が必要です。文字ばかりの小冊子は読まれません。図解や写真を効果的に配置することで、理解度は飛躍的に高まります。

ただし、医療機関として注意すべきは「患者様の心理的ハードル」です。専門家には見慣れた口腔内写真や治療風景も、患者様にとっては不快感や恐怖心を与える場合があります。そうした写真はイラストや明るいイメージ画像に置き換えるなど、患者様が「見たい、知りたい」と思えるような配慮をスタッフ自身が考えることで、医療者としての一方的な視点から、サービス業としての多角的な視点へと意識が変化していきます。

3. モチベーションを加速させるミーティングの運用

素晴らしい小冊子が完成しても、それを患者様にお渡しできなければ宝の持ち腐れです。配布を形骸化させず、スタッフのやる気を継続させるのが定期的なミーティングの役割です。

「結果」よりも「プロセスと挑戦」を賞賛する場

小冊子の配布が始まると、「忙しかったから」「興味がなさそうだったから」という理由で配布が進まない時期が必ず訪れます。ここで院長が「なぜ配らないんだ!」と感情的に叱責しては逆効果です。

大切なのは、できた・できないという結果だけでなく、配布しようとした試みや、患者様との間で起きた小さな変化を共有することです。上手くいかなかったケースも「どうすれば次は渡せるか」を全員で前向きに議論する場にします。成功体験を共有し、互いに称賛し合うことで、スタッフのモチベーションは維持され、やがて個人の工夫が医院全体の共通ノウハウとして確立されていきます。

成功事例:唾液検査数が8倍に激増した実録

私の担当医院で「唾液検査の重要性を伝える小冊子」を作成・導入したところ、驚くべき成果が出ました。導入前は月間27名程度だった検査実施数が、わずか数ヶ月で220名へと、約8倍に跳ね上がったのです。

これは小冊子が優秀だったからだけではありません。スタッフが小冊子の内容に合わせて物販コーナーのPOPを自発的に工夫したり、掲示物を刷新したりと、小冊子を起点に医院全体をアップデートし続けた結果です。物販の売上も実施前の1.8倍に増加しました。特筆すべきは、これらの取り組みのほとんどが院長の指示ではなく、スタッフ主導で行われたという点です。

4. 成長し続ける組織を作る「マネジメントサイクル」の確立

この取り組みの本質は、小冊子という成果物を完成させることではなく、制作・運用を通じて「マネジメントサイクル」を院内に定着させることにあります。

PDCAを回し、スタッフが自ら育つ環境へ

計画(P)、実行(D)、評価(C)、改善(A)という一連のサイクルを、小冊子の活用を通じて回していきます。スタッフが自分たちの行動を振り返り、課題を見つけ、改善策を実行する。この繰り返しが、単なるスキルの習得を超えた「スタッフの人間的成長」をもたらします。

マネジメントサイクルが機能し始めた医院は、院長が細かな指示を出さなくても、スタッフが自ら課題を見つけ、解決に向けて動き出すようになります。オリジナル小冊子は、そのサイクルを回し始めるための、最高に具体的で分かりやすい「共通言語」となるのです。

結論:ツールを侮らず、組織の資産として活用する

オリジナル小冊子の制作は、一見すると手間のかかる作業かもしれません。しかし、そこから得られる「理念の共有」「患者視点の醸成」「自走するチーム」という果実は、制作コストをはるかに上回る価値を医院にもたらします。

スタッフがやりがいを感じ、院長と同じ方向を向いてイキイキと働く。そんな理想の組織作りにおいて、オリジナル小冊子は強力な武器となります。もし、スタッフマネジメントや価値の伝達に課題をお持ちであれば、この記事を一つのきっかけに、制作を検討してみてはいかがでしょうか。

私たち「Mr.歯科事務長」では、今回ご紹介したような、スタッフの自主性を引き出しながらマネジメントサイクルを構築するお手伝いを行っております。ツール制作のサポートから、その後の運用・定着まで、貴院の状況に合わせた最適な組織づくりを伴走支援いたします。ご興味のある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

MOCAL株式会社 

飯島 真貴 Maki Iijima

エンジニアとしてシステム会社に入社後、病院向けパッケージソフトの営業アシスタント兼インストラクターの経験を機に、自ら志願して営業職へ異動。歯科医師が開発したレセコンの営業担当として新規ユーザーの獲得に貢献し社長表彰を受ける。その後、企画マーケティングの教育会社に転職。歯科医院に特化したマーケティングサポートの事業責任者として、会計事務所と共にツールを活用した増患増収の仕組み作りを行い、歯科医院へのノウハウ提供を行う。同会社を退職後、歯科医師が主宰する大型歯科医院を対象とした勉強会を運営する会社に転職。事務局スタッフとして、コンテンツ制作やセミナー運営、会員サポートに携わる。レセコン営業からスタートした歯科業界歴は20年以上になるが、いずれも外部からのノウハウ提供であったことにサポートの限界を感じていたところ、Mr.歯科事務長のサービスを知り、数年間の経過観察を経て入社を決める。

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