自費治療をすすめる際の大切な視点!自費率向上へ向けた考え方

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患者様は処置ではなく、変わる自分を買っている

歯科医院の経営において、売上を支えるのは保険・自費・物販の3柱ですが、その源泉はすべて患者様の決断にあります。では、患者様は財布を開く瞬間に何を見ているのでしょうか。

表面上は、詰め物や被せ物、あるいはインプラントという処置にお金を払っているように見えます。しかし、その本質は今の不安が解消され、自信を持って笑えるようになる未来です。患者様は形ある物ではなく、その先にある価値を購入しているのです。

私はかつて英会話営業をしていましたが、当時の上司から、教材を売るな、英語が話せるようになった未来の自分を売れと叩き込まれました。これは歯科医院でも全く同じです。患者様は高価な素材が欲しいのではなく、それによって手に入る、美味しく食事ができる生活や、コンプレックスから解放された自分という価値を渇望しているのです。

なぜあなたの提案は、いとも簡単に断られてしまうのか

日々、診療の合間を縫って丁寧に説明していても、なかなか成約に結びつかない。そんなもどかしさを感じていませんか?タイミングが合わない、家族に相談したいといったお断りの言葉は、必ずしも真実とは限りません。

患者様が自費診療を躊躇する背景には、時期、金額、効果、優位性、持続性という5つの心理的障壁が存在します。中でも金額へのお断りが圧倒的に多いのは、単に値段が高いからではありません。提示された価格に見合うだけの価値を、患者様が自分の中に落とし込めていないことが原因です。

お金がないと口にする患者様でも、趣味やスマートフォンの最新機種には惜しみなく支出していることがあります。それは、それらの物には価格以上の価値を認めているからです。つまり、歯科治療の優先順位が上がっていないだけなのです。

もし高いですねと言われたら、反論するのではなく、まずはプロとして謝る姿勢を見せてみてください。これは価格を申し訳なく思うのではなく、私の説明不足で、この治療があなたの人生にどれほど貢献するかをお伝えしきれませんでした、と誠実に伝えるのです。この一言が、患者様の閉ざしかけた心を再び開き、価値を再考してもらうきっかけとなります。

説得は抵抗を生み、納得は決断を生む

スタッフが自費提案に消極的な理由として、売りつけるようで嫌だという心理があります。しかし、それは患者様のニーズではなく、自分の商品を売ろうとする意識が強いからかもしれません。患者様は自分の健康に関する専門的な説明を求めていますが、一方的な説得には強い抵抗を感じます。

人間には、自分の意思で決めたいという本能的な欲求があります。同時に専門家に背中を押してほしいという依存的な心理も併せ持っています。大切なのは、信頼関係をベースに、患者様の人生をより豊かにする選択肢を提示し、導いてあげることです。これを私は、買わせてあげるという慈愛のマインドと呼んでいます。

歯科医師や衛生士が、その治療こそが最善であると確信しているならば、それを伝えないことこそが不誠実です。売るのではなく、患者様の幸せのために最良の選択をサポートする。このスタンスの転換が、患者様の納得感を生み出し、自然と成約率を高めていくのです。

12パーセントの壁。検討しますという言葉の残酷な現実

カウンセリングの最後に、少し考えますと言われて安心していませんか。実は、この言葉を鵜呑みにすることは、その患者様の健康を見捨てることと同義かもしれません。

ある矯正歯科医院のデータでは、検討のために返事を持ち越した患者様がその後成約に至った割合は、わずか12パーセントでした。残りの約9割は、医院を一歩出た瞬間に、説明された時の感動や危機感を日常の忙しさの中に埋没させてしまいます。翌日には、価値の記憶は霧のように消えてしまうのです。

検討したいという気持ちは尊重すべきですが、その場で以下の2点を確認する勇気を持ってください。 1つは、いつまでにこの悩みを解決したいと思っているのか。もう1つは、最終的な判断を下す際の決め手は何なのか。 これらを明確にすることで、患者様が抱える真の不安が見えてきます。この不安に寄り添う想像力こそが、本当に必要な治療を届けるための鍵となります。

患者様の理想の未来を届けるという使命

改めて問いかけてみてください。あなたの歯科医院で、患者様は何に価値を感じてお金を払っていますか。

自費診療をご提案することは、決して押し売りでも強欲でもありません。むしろ、患者様が抱える長年の悩みやコンプレックスを解消し、望む未来を手に入れるための、唯一無二の切符を手渡す行為です。

成約率を上げるためのテクニックは重要ですが、それらはすべて、患者様を幸せにしたいという強い信念があって初めて輝きを放ちます。この記事をきっかけに、医院全体で価値の提供について改めて見つめ直してみてください。プロとしての誇りを胸に、患者様の欲しい未来を堂々とご提案し、その手助けをしてあげてください。。

この記事の解説者

MOCAL株式会社 

緒方 尚子 Naoko Ogata

大学卒業後、航空自衛隊に入隊し、12年5ヵ月勤務。

その後フルコミッション営業の世界に飛び込み、外資系英会話アカデミーで、史上最短でタイトルを獲得しトップセールスとなる。

外資系生命保険会社に転職し、5年半勤務。

MDRT成績資格会員となり海外の研修にも参加。

『「あなただからお願いしたい」と言われるためのコミュニケーション勉強会』を主宰し、個人事業主向け営業セミナー、経営者向け財務セミナーなど多数開催。

友人の歯科医師から、クリニックスタッフへの勉強会を依頼されたことをきっかけに、歯科医院、中小企業のスタッフ向け勉強会を実施し好評を得る。

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