このコラムでは歯科医院のマネジメントで多くの院長がお悩みの「スタッフマネジメント」のコツをご紹介していきます。
経営とは「人を使って成果を上げる営み」と言われています。歯科経営も同じく、院長一人でできる仕事には限りがあります。そのためスタッフを採用し、受付、アシスタント、衛生士業務など分業をしていくわけです。
しかし「人を使う」と一言でいっても、実際には「思うように動いてくれない」「催促しないと実行しない」「やっているのかやっていないのか報告もなく、ヤキモキする」という院長が多いが実情のようです。
今回は、スタッフに仕事をやってもらうコツ、マネジメント力がアップする院長の仕事術をご紹介します。
スタッフに頼んだ仕事が忘れられてしまう理由とは?
「スタッフに指示した仕事が実施されない!」
「あの仕事どうなった?と何度も確認しないと実施されない!」
このような問題で日々ストレスに感じている院長も多いのではないでしょうか?
スタッフ自身の社会人経験が少ないため、仕事を覚えるために時間がかかるという面は否めませんが、組織に責任を持つ院長としては嘆いてばかりもいられません。
世の中の経営書に書かれている通り、自分自身ができることに集中し、そこから打開策を打ち続けていくしかありません。
そうした前提に立ち、まず「頼んだ仕事が忘れられてしまう」という背景について考えてみましょう。
大きく3つの理由があります。
- 院長自身が頼んだ仕事を忘れてしまうこと。
- 指示の内容が日によってコロコロ変わってしまう(院長には具体的な理由があっても、少なくてもスタッフにはそう感じる)こと。
- 仕事を実施(報告)しても院長からの反応がないこと。
があげられます。
上記の3つを何度か繰り返すと、「院長から頼まれた仕事はそれほど重要なものではない」とスタッフが考えるようになります。
「本当にやって欲しい仕事なら、しばらくしたらもう一度言われるだろう。それまでは、とりあえず放置しておこう」という悪い習慣・カルチャーが定着してしまいます。
つまり忙しすぎる院長自身の仕事方法が、こうしたスタッフを作ってしまっている面もあると言えるでしょう。
スタッフが仕事してくれるシンプルな指示方法とは?
これらを魔法のように解決する方法は至ってシンプルです。
次の三つを実践してみましょう。
スタッフに指示をした内容をメモに書き留めること。
できれば、指示を出すその時に、スタッフの目の前で書きとめる。
こうすることで、指示された仕事に対して後でチェックがあることをスタッフが認識します。
期限に必ずチェックを行うこと。
このチェックをすることが上司の仕事の基本です。
マメな方であれば、手帳やカレンダーにチェック日を入れることが望ましいですが、チェックそのものを忘れてしまう方は、予め「毎週〇曜日の〇時に、仕事のチェックをする日」など、定期スケジュールにすると良いでしょう。
実施してくれた仕事を評価し、感謝の言葉を伝えること。
「ありがとう」という感謝の言葉には、その行動を維持させる効果があります。
特に女性スタッフの場合は、お給料や出世という男性にとって魅力的に感じる評価より、感謝された、喜んでもらえた、という精神的な報酬のほうがモチベーションにつながります。賞与や昇給時の評価ではなく、その時々に感謝の言葉を伝えることが、効果的でしょう。
「頼んだ仕事をメモに残す」。たったこれだけの仕事術を実践するだけで、スタッフの仕事への意識づけが大きく変わり、その結果、仕事の進みも良くなり、院長のストレスも軽減されることになります。
実践はひと手間がかかって面倒と感じてしまうかもしれませんが、こうした実践は、院長の指示が行われる組織をつくるための躾であり、マネジメントの基本スキルの一つです。ぜひ実践をお勧めします。
スタッフに任せてはいけない仕事とは?
次に現場で時々見かけるマネジメント上、不適切な仕事の指示について考えていきます。
経営者である院長には、ありとあらゆる仕事やタスクが、次から次へと、しかも重要なものから雑用まで、順番や秩序なく持ち込まれます。
こうした背景から、組織管理上スタッフにやらせてはいけないタスクまで、任せているケースを見受けることがあります。
「むちゃぶり」という言葉もありますが、トップである院長が行うべきことを、スタッフに任せることで、規律や秩序が乱れ、組織がジワジワとメルトダウン(指示が行われない、ルールが守られない、院長の統率力が低下する)してしまうことがあります。
では、やってはいけない「むちゃぶり」とはどのような仕事でしょうか?
比較的、多く見受けられるケースには以下のものがあります。
「決定」に関すること
「この人を採用した方が良いと思うか?」「チーフを誰にするか?」という、人事に関する決定や、「補綴の価格をどうするか?」など、事業の業績に直結すること等、経営の根幹に関わる「方針の決定」は、トップである院長のみの「権限」であり、「独裁(ひとりで責任をもって決定)」すべき案件です。
もちろんスタッフの意見を聞くことはあっても良いでしょう。しかし最終的には「私の決定」として示すことで、院長が群れを率いるリーダーであることと、責任の所在を明確にします。
決定には責任が伴うため、疲れていたり、弱気になっている時には、「みんなの意見で決めた」という精神的な逃げ場を作りたいという甘いささやきに流されてしまいそうになることもあるかと思います。しかし、経営の根幹にかかる決定に口出しすることに慣れたスタッフは、いつの日か「勘違い」し、院長へのリスペクトや節度ある態度も忘れてしまい、誰がリーダーなのか分からない組織風土ができる恐れがあります。
クレーム対応
正しくクレーム処理を行わないと、医院の信用が損なわれることはもちろんのこと、小さなクレームのなかに、将来の大きな問題の種が隠れています。これを未然に防ぐことも院長の重要な仕事です。
組織規模が大きくなっていく過程では、クレームのレベルにより、一次対応、二次対応など役割とガイドラインをつくっていくことになりますが、組織規模が10人未満のクリニックであれば、基本的には、クレームは率先してトップが行うべきでしょう。
診療の都合上、どうしてもすぐに院長が対応できない場合でも、一次対応するスタッフにきちんと対応の方針を明示することはもちろん、最終責任者としてしっかりとフォローし、ねぎらう等の配慮が必要です。
権限を超えた責任を部下に負わせない
「A先生に言っておいて」など、歯科助手にドクターへの改善点を指示させるなどの権限を超えた仕事をさせることは、組織全体に院長への不信が芽生えるきっかけとなります。
また、ボーナスカット、雇用条件の不利益変更(日曜診療を始める、休日日数が減る)など、スタッフ誰もがネガティブに受け取る方針をチーフに発表させるなど、右腕クラスのチーフでも荷の重い、誰もが嫌がる仕事は院長が行いましょう。
「最後は院長が責任をとる」という姿勢が、日ごろの指示命令を実行させる「説得力」「上下の秩序」につながっています。
院長は、孤独で風当たりの強い判断業務を行う立場にありますが、この「強い責任感」こそ、歯科医院のマネジメントに成功する院長の共通した特徴と言えるようです。
今回は、「人を使って成果をあげる」という院長の経営者としての仕事力をアップするための、「今日から実践できる仕事術」をご紹介しました。
「こんな細かいことにも配慮しなければいけないのか、、面倒くさいな、、」と思われる院長もいらっしゃるでしょう。しかしこれからの時代は、さらに繁盛医院とそうでない医院の二極化が進んでいきます。勝ち残るためには一定の規模を求める必要があり、大きくなっていく組織をマネジメントしていくための仕事の仕方、マネジメントの仕方を学んでいく必要があります。
まだまだ臨床の勉強もしたい、しかしマネジメントの必要性も出てきたが、じっくりと考えを整理する時間の確保も難しいという院長先生は、弊社のような「アウトソーシングによるマネジメント支援サービス(Mr.歯科事務長)」を検討してみても良いでしょう。
院長と二人三脚で、院長の苦手部分をフォローし、チーム作りや仕組みづくり、組織作りをサポートします。