この記事では、歯科医院経営で多くの院長がお悩みの「スタッフマネジメント」のツボについて解説しております。ミーティングで意識すべきスタッフへの説得のコツもご紹介しておりますので、ぜひご参考にされてください。
歯科医院でよくあるスタッフマネジメントの共通の悩み
「スタッフが指示通りに動かない」
「決めたことがだんだん守られなくなっていく」
「新しい取り組みには必ず抵抗や反対する」
上記の声は、ほとんどの歯科医院の院長のお悩みではないでしょうか?
そもそも歯科医院に限らず「経営」を行うということの本質には、自分以外の人を使って事業を行うという側面があります。そのため「人の悩み」は経営者の悩みの大きな部分を占めるのはうなずけます。
なぜスタッフはネガティブな反応を示すのか?
開業時は院長と2~3名のスタッフで診療をスタートします。
この頃は、人数が少なく、院長とのコミュニケーション頻度が高いため、気心も知れ、阿吽の呼吸でスタッフと院長の仕事が調和しています。
ところが、歯科医院経営も軌道にのりスタッフ数が増えてくると、いろいろな雑音が組織内に発生してきます。
特に、スタッフミーティング等で新しい取組を始めるなど、変化を伴う指示を出す場合には、必ずと言ってよいほど、ネガティブな意見や言い訳が噴出します。例えば、
「メンテのアポを60分から45分に変更する」
「診療時間を短くする分、出勤時間を30分早くする」
「補綴の説明に、アニメーションソフトを活用する」
など、院長としては、患者さんやスタッフ、クリニックの将来のために良かれと考えた判断でも、必ず「抵抗」や「反発」が起きてきます。
「当院で一番大切なことって患者さんとのコミュニケーションじゃなかったんですか!」
「朝がゆっくりだからこの医院に就職したんです!」
「忙しくてできません!」
スタッフミーティング中に、声の大きい影響力のあるスタッフが口火を切ってしまったが最後、収集をつけることは難しくなります。
こうしたスタッフのネガティブな反応の背景にある主な理由には次のようなものがあります。
・仕事が増えることへの不安
・やり方を変えること(慣性の法則)への本能的な抵抗
・性格的、習慣的な反応
こんな時、院長ならどうしますか?
マネジメント実践ポイント!歯科医院のミーティングで実践すべき「説得のコツ」
私達が数多くの歯科医院のマネジメントをサポートしていて「スタッフマネジメントが上手だな」と感じる院長は、次の2つの方法を意識してスタッフミーティングでコミュニケーションを取られています。
①「無理を承知でお願いする」(責任は院長がとるから、まずはやってみて欲しい!)
凡人の性として「苦痛や困難について、自分で責任を取りたくない」という深層心理が働いています(いわゆる人のせいや環境のせいにしたい気持ち)が、この言葉を伝えることで、何かあっても「心理的に院長のせい」にできることが抵抗を和らげる働きとなります。
②「なぜ、これを行う必要があるのか?」を、手を抜かずに説明する
特に、業績や数字に関して指示を出す時ほど、逆に「なぜ?」という「目的」「意義」の話を多めにすることが、スタッフに気持ちよく協力してもらうためのコミュニケーションのツボと言えるでしょう。
意義や目的が8割、方法論や数字は2割ぐらいの配分で話すとスタッフも納得度が上がります。
特に女性の場合は、収支などの合理的な観点だけではなく、患者さんのためやスタッフ、家族のためなど、情や感性に訴える意義のほうが届きやすいと言われています。
また説得が上手で、スタッフが一糸乱れずに動いているある歯科医院では、院長がスタッフミーティングのたびにしっかりと説明資料を準備して臨まれています。
院長とスタッフの意識の乖離は想像以上に大きい
院長とスタッフの意識の乖離は、クリニックでよく聞く以下の会話で分かります。
院 長 :「いつも話してることだから、分かっているはず!」
スタッフ:「院長が何をやりたいのか分からない!」
これはよくあるシーンです。
この会話から、「大事なこと」や「自分の考え」は、何度も何度も繰り返して話すことが必要なのが分かります。
遠慮せずに、20回でも30回でも同じ話をしていきましょう。
ちなみに、私の前職場では、社長の同じ話を100回以上は聞きましたが、少しずつ社員に浸透し、お客様先で社員が社長と同じことを話すようになることを、何度も目の当たりにしました。
コミュニケーションや情報伝達は「仕事に付随する雑務」と考えがちですが、組織のリーダーにとっては「大切な仕事そのもの」です。またドラッカーも指摘しているように、相手に行動を促すために伝えるための時間は、思ったよりも長く必要だ(最低でも60分)と言われています。
スタッフミーティングでのコミュニケーションや、日常の仕事の中で「なぜ」についてどのくらいスタッフに伝えているか、一度、振り返ってみてはいかがでしょうか。
歯科医院経営におけるマネジメントの重要性
歯科医院経営の成功には、優れた臨床技術だけではなく効果的なマネジメントも重要となります。マネジメントはクリニック運営を効率的にし、患者さんの満足度を高め、最終的には事業の収益性を向上させるために不可欠です。
効率的な歯科医院運営の実現
効果的なマネジメントにより、日々のクリニック運営を効率化できます。例えば予約システムの最適化や在庫管理、スタッフの人員配置・組織設計などがあたります。
適切なマネジメントがなければ、集患効率の悪化や患者さんの待ち時間の増加など医院の生産性の低下に発展し、収益に悪影響を与える可能性があります。
スタッフのモチベーションと生産性の向上
マネジメントはスタッフのモチベーションを向上し、生産性を高めるためにも重要です。院長とスタッフ間での明確なコミュニケーションや適切な給料体系、キャリア開発の機会など、良好な職場環境を提供することで、スタッフの満足度が向上し、離職率の低下にもつながります。
これにより経験豊富なスタッフの定着率を高め、患者さんに対して一貫した高品質の接遇やサービスを提供できるようになります。
患者満足度の向上
マネジメントは患者満足度を直接的に向上させることにも繋がります。患者さんは治療だけでなく、クリニックに訪問した際の全体的な体験から総合的に歯科医院を評価する傾向にあります。
スムーズな来院予約から短い待ち時間、親切で丁寧なスタッフの対応は、患者さんがクリニックに持つ印象を大きく左右し、リピーターの確保や新規患者の獲得にもつながります。
以上のように歯科医院におけるマネジメントは、クリニックの運営効率やスタッフの生産性、そして患者さんの満足度に影響を与えるため、経営戦略の中核になります。マネジメントを行うことでクリニックは持続可能な成長を遂げ、競争の激しい市場を勝ち抜くことができます。
マネジメントに苦労する歯科医院の院長が多い理由
スタッフのマネジメントに悩まれる院長が多いのには、以下の背景があると考えられます。
時間的な制約
歯科医院の院長は診療のみならず、事務作業や雑務に多くの時間を割かなければならないため、マネジメントやスタッフ教育に充分な時間を割り当てることが難しい傾向にあります。
特に小規模なクリニックでは人手が限られているため、院長が多岐にわたる役割を担うことが求められます。これによりスタッフの育成やモチベーション向上など、マネジメントに必要な時間を確保できない場合があります。
専門的スキルと経営スキルのギャップ
多くの臨床経験を積み重ね、優れた技術をお持ちの歯科医師も多数いらっしゃいますが、技術力があったとしても必ずしも優れたマネージャーやリーダーであるとは限りません。
歯科医師としての長年の訓練と実践が、良い人材管理やマネジメント戦略へ繋がるわけではなく、スタッフマネジメントを経験せずに独立される院長も多くいらっしゃるため、開業後に初めてマネジメントを経験し苦労されるケースも多くみられます。
この記事の解説者
MOCAL株式会社 代表取締役
今野 賢二 Kenji Konno
歯科業界歴25年。歯科医院向けソフト開発・販売のベンチャー企業で、マーケティング・営業マネージャーとして、販売の仕組みづくりの中心的役割を担い、トップブランド構築に貢献。
歯科医院の経営・マネジメントでお悩みなら「Mr.歯科事務長」
約15年で400院以上の歯科医院を支えてきた豊富な実績
歯科業界やクリニック運営、マネジメントに精通した事務長が40名以上在籍しているため、問題解決に向けて豊富なノウハウに基づいたご提案をすることができます。
クリニックのお悩みに応じた10種類以上の支援プラン
現状の医院の規模や将来的な目標達成に向けて、豊富な支援プランの中から必要なご支援を選ぶことができます。無料相談では事務長が直接ヒアリングを行うので、一緒に必要なプランを考えながら、適切なサポートを受けることが可能です。
提案だけではない!実行型の歯科医院のサポーター
一般的なコンサルティングサービスとは異なり、アドバイスだけでは終わりません。クリニックに直接訪問し、院長やクリニックのスタッフさんと共に、一歩一歩実務を通じて内部の課題や問題解決へ伴走します。