「ムダ」をなくす歯科医院の整理術 ~チームで実現する生産性向上~

多くの歯科医院で日常的に交わされる「片付けておいて」という言葉。しかし、この一言だけでは、なかなか整理整頓が進まないのが実情ではないでしょうか? なぜならスタッフの間に「何のために」「どのように」整理するのかという共通認識が欠けていることが多いからです。

今回は単なる美化活動にとどまらない、歯科医院が取り組むべき「生産性を向上させる整理術」についてご紹介します。

目次

「片付けておいて」では変わらない整理整頓の真の目的

整理整頓は目的ではなく手段である

整理整頓は、単に院内をきれいにすることがゴールではありません。真の目的は、業務のムダを省き、生産性を向上させ、ひいては患者様へより良い医療を提供するための環境を整えることです。 整理整頓は、安全で効率的な診療を実現するための重要な「手段」なのです。

あなたのクリニックにも潜むムダ

もし、日々の診療で以下のようなストレスを感じているなら、整理方法を見直す時期に来ているかもしれません。

空間のムダ 使われていない備品や、定位置が決まっていない書類が、貴重な診療スペースやスタッフルームを圧迫していませんか?

時間のムダ 必要な器具や材料を探すのに手間取り、治療開始が遅れたり、スタッフも歯科医師もお互いにイライラしたりしていませんか?

お金のムダ 在庫管理が曖昧なため、あるはずの材料を重複購入してしまったり、逆に期限切れで廃棄したりするロスが生じていませんか?

手間のムダ 「あれどこ?」といった確認のためのコミュニケーションコストが発生していませんか?

体験談から学ぶ!整理の落とし穴と歯科医院によくある課題

実際に多くの歯科医院で見受けられるのは、収納スペースがいわゆるブラックボックス化してしまう現象です。 引き出しや棚の奥に何が入っているか特定の人しか知らず、いざという時に探し出すのに苦労したり、頻繁に使う器具が迷子になってしまったりします。

さらに問題なのは、暗黙の了解や属人化が蔓延することです。「〇〇さんに聞かないとわからない」という状態では、そのベテランスタッフが不在の際に現場が混乱してしまいます。

こうした状況下で、院長が「片付けておいて」という抽象的な指示だけを出しても、スタッフは何から手をつけて良いかわからず、結局は物を右から左へ移動させただけの「現状維持」で終わってしまうのです。これらは全て、目的意識のない「なんとなくの整理」が招く結果と言えるでしょう。

院内の生産性UPを実現する整理術のステップ

では、クリニック全体の生産性を向上させるためには、具体的にどのようなステップで整理を進めれば良いのでしょうか。

ステップ① 目的を明確にしてゴールを共有する

まずは、何のために整理するのか?具体的な目標を院内全体もしくはプロジェクトチーム内で共有します。「きれいにする」ではなく、「治療準備時間を〇分短縮する」「在庫スペースを整えてカウンセリングルームを作る」など、具体的な目標を設定することが有効です。

ステップ② 見えないムダを可視化する

各ユニット、各収納スペースにおいて、「何が」「どれだけ」「どのように」保管されているかを徹底的に洗い出します。写真撮影をして客観的に見たり、付箋を使って物の量を可視化したりするアナログな手法も有効です。

ステップ③ 要・不要の判断と定位置の決定

「整理」の基本は、不要なものを取り除くことです。「いつか使うかも」という考えを捨て、使用頻度の低いものや破損しているものは思い切って処分しましょう。 その上で、必要な物には誰が見てもすぐにわかる「定位置」を決め、ラベリングを行います。

ステップ④ 収納方法の見直しとルールの明確化

収納用品を活用してスペース効率を高めると同時に、「在庫が残り〇個になったら発注を出す」といった具体的な運用ルールを定めて掲示します。 一度整理したら終わりではなく、定期的に見直しを行い、常に無駄なく変え続ける仕組みを作ることが重要です。

チーム一丸で取り組むための具体的な方法

取り組みを成功させるためには、院長によるトップダウンの指示だけでなく、スタッフ全員を巻き込んだ仕組みづくりが不可欠です。

そのためにも、まずは院長自身の率先した行動が必要です。整理整頓の重要性を言葉で伝えるだけでなく、業務時間内に整理のための時間を確保するなど、医院全体のリソースを割く姿勢を見せることがスタッフの意識改革の第一歩となります。 その上で、全員でのワークショップなどを通じて現状の課題を出し合い、誰がどこを担当するか役割分担を決めましょう。

また、現場の動線を最もよく知るスタッフの意見は宝の山です。彼女たちのアイデアを積極的に採用し、小さな改善でも「ありがとう、使いやすくなったね」と承認することで、モチベーションは維持されます。 最終的に、決定したルールをマニュアル化して仕組み化し、誰でも再現できる状態にすることこそが、チームで取り組む整理術のゴールです。

誰にでもわかる整理がスムーズな診療を生む

整理整頓は、単なる見た目の改善活動ではありません。 物の場所が明確になり、新人でもベテランでも誰もが迷わずスムーズに業務を行える環境を作ること。それこそが、生産性向上、ひいては患者様への質の高い医療提供に繋がる最も重要な土台です。

物理的な整理が進むことで、探し物のストレスから解放され、時間にゆとりが生まれます。整然とした空間は、働くスタッフの心に余裕と集中力をもたらし、チームワークの向上にも繋がるでしょう。

院長とスタッフが一丸となって、目的意識を持った整理術に取り組むことで、クリニック全体の効率化と患者満足度の向上を実現できるはずです。 今日から皆様のクリニックでも「ムダ」をなくす整理術を始めてみませんか?

自分たちだけで進めるには難しいと感じている院長先生、ぜひお気軽にご相談ください。貴院に最適な整理術と仕組みづくりを共に考え、実現に向けてサポートさせていただきます。

この記事の解説者

この記事の解説者

Mr.歯科事務長

小栗 愛子 Aiko Oguri

秋田県出身 血液型O型

歯科医院で受付スタッフとして勤務。その後、医院規模拡大によりバックオフィス業務(院長秘書、スタッフ育成、労務、総務、経理、外部関係者との渉外など)を担当。

また、院長が主宰を務めるスタディグループの事務局としての業務も兼務。勉強会や講演会等のイベントの企画・運営にも携わる。

その後、総合病院が運営する子会社に転職。自社の労務、総務、経理、財務・管理会計そのほか、総合病院内のプロジェクトサポート、手術室使用材料データ管理システムの構築や、総務部門の業務サポートの経験を経て、MOCAL株式会社に入社。

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