ベテランとしての実務能力は非常に高いものの、周囲への当たりが強く扱いにくい。そんなお局スタッフの存在は、採用や定着率に深刻なダメージを与え、医院の生産性を低下させる大きな要因となります。
しかし、彼女たちを単なる問題児として切り捨てるのは、長年蓄積された知見というリソースを放棄することに他なりません。本コラムでは、彼女たちの心理を読み解き、強力な戦力へと変えるためのタイプ別対応策を解説します。
なぜお局化するのか?

お局化の原因は個人の性格だけではありません。多くの場合、医院のマネジメント体制が彼女たちの承認欲求を正しく満たせていないことに起因します。
正当な評価への飢え
長年の経験で培った自分なりのノウハウや知見が、院長や組織から正当に評価されていないと感じています。教える立場としての公式な役割が与えられていないために、教えたいという意欲が余計な口出しという形で現れ、周囲との軋轢を生んでしまいます。
変化に対する防衛本能
新しいルールや若いスタッフの意見によって、これまでの自分のやり方が否定されると感じると、自身の存在価値を守ろうとして攻撃的になります。変化を拒否することは、彼女たちなりの自己防衛なのです。
承認欲求と影響力の誇示
院長から十分な感謝や承認を得られない不満から、自分の居場所や影響力を誇示しようとします。かつて頼られる存在であった自負が強いほど、特別な承認が得られないことに強い不満を覚えます。
タイプ別お局スタッフへの具体的アプローチと実践のコツ

行動の裏にある心理を見抜き、適切な役割を与えることが解決の近道です。
完璧主義の指導者タイプ
仕事は速く正確ですが、マイルールを他者に強要し、ミスをした新人を厳しく追及して萎縮させてしまいます。
・対応策:仕事の正確さを認めつつ、それを後輩へ伝える公式な役割を与えます。
・運用のコツ:あなたの経験を個人で終わらせるのは惜しいと伝え、マニュアル標準化の責任者に任命します。
誰がやっても同じ結果が出るルール作りを依頼することで、属人的な指導を客観的な基準へと昇華させます。
不機嫌なベテランタイプ
常に不機嫌なオーラを放ち、周囲が話しかけづらい雰囲気を作ることで報連相を滞らせます。
・対応策:対人接触を最小限に抑え、専門性を活かせる実務に特化させます。
・運用のコツ:レセプトチェックや在庫管理、統計作成など、バックオフィスでの集中作業を任せます。
その成果に対し、1対1の場で具体的な感謝を伝えることで承認欲求を満たします。
情報支配者タイプ
陰口や派閥作りで人間関係をかき乱し、スタッフの離職を招く最大の元凶となり得ます。
・対応策:コミュニケーションルールを明文化し、その能力を建設的な方向へ向けさせます。
・運用のコツ:事実に基かない噂話をしない等のルールを徹底させつつ、人の感情を察する長所を活かしてメンター(相談役)という役割を与えます。
ネガティブな情報操作を、建設的な組織づくりへのミッションに変換させます。
放置は厳禁。見て見ぬふりがクリニックを破綻させる理由

能力が高いからと問題行動を放置することは、長期的には医院経営を破綻させます。
放置は公認というメッセージになる
院長が注意しないことで、他のスタッフは問題行動が許容されている、あるいはこれが医院の文化だと解釈します。これは院内全体のモラル低下を招き、特に新しい風を期待して入職した若手の早期離職に直結します。
業務改善の停滞と競争力の低下
お局スタッフの抵抗によってIT化や効率化が阻害されると、医院全体の最適化よりも個人最適が優先されてしまいます。現代の医療機関において、業務改善の停滞はそのまま競争力の低下、サービス品質の低下を意味します。
解決への鍵は対話・ルール・一貫した姿勢

お局スタッフに対しては、感情的にならずに一対一で毅然と向き合うことが重要です。個人の好き嫌いではなく、医院の利益とルールを軸に対応することが、院長のリーダーシップを確立し、他のスタッフからの信頼を勝ち取ることに繋がります。
院長の役割は、彼女たちが長年培った経験を単なるやり方で終わらせず、院内全体の資産(マニュアルや教育体制)として還元できる仕組みを作ることです。これが医院全体を成長させる真の鍵となります。
まとめ
お局スタッフは単なる問題児ではなく、長年の勤続によって得られた貴重なリソースでもあります。まずは貴院のスタッフがどのタイプに当てはまるかを見極め、適切なアプローチを検討してみてください。
組織マネジメントは院長一人で抱え込むには重すぎる課題です。専門家の視点を取り入れることで、判断の質と速度は格段に上がります。チーム運営や人事評価に課題を感じている院長先生は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の解説者

この記事の解説者
Mr.歯科事務長
小栗 愛子 Aiko Oguri
歯科医院で受付スタッフとして勤務。その後、医院規模拡大によりバックオフィス業務(院長秘書、スタッフ育成、労務、総務、経理、外部関係者との渉外など)を担当。
また、院長が主宰を務めるスタディグループの事務局としての業務も兼務。勉強会や講演会等のイベントの企画・運営にも携わる。
その後、総合病院が運営する子会社に転職。自社の労務、総務、経理、財務・管理会計そのほか、総合病院内のプロジェクトサポート、手術室使用材料データ管理システムの構築や、総務部門の業務サポートの経験を経て、MOCAL株式会社に入社。
