歯科医院の現場は、診療から受付、事務処理まで常に時間に追われています。タイトなスケジュールの中でスタッフのモチベーションを高く保つのは至難の業に見えるかもしれません。
しかし、モチベーション管理の本質は、無理に気持ちを盛り上げることではなく、意欲が自然と維持される環境を整えることにあります。本コラムでは、忙しい現場でも即実践できる実務のコツをご紹介します。
なぜ歯科医院ではモチベーション管理が難しいのか

多くの歯科医院が抱える課題の背景には、歯科特有の労働環境があります。
意欲あるスタッフほど陥りやすい疲弊の罠
歯科医院の業務は多岐にわたります。医院規模にもよりますが、例えば歯科助手の場合は補助だけでなく、接客、清掃、会計、予約対応。これらを少人数で回すため、物理的にも精神的にも余裕がなくなりやすいのが現実です。特に責任感の強いスタッフほど、自分の限界を超えて動いてしまい、ある日突然燃え尽きてしまうという現象が起こりやすくなります。
見逃してはいけないモチベーション低下のサイン
院長が多忙を極める中では、スタッフの内面まで目を向けるのは難しいものです。しかし、モチベーションの低下は必ず小さなサインとして現れます。 ・以前に比べてミスが目立つようになった ・報告や相談の回数が減った ・スタッフ間の会話が少なくなり、笑顔が消えた これらの兆候を放置すると、チーム内の雰囲気はギスギスし、最終的には離職へと繋がってしまいます。
スタッフのやる気を支える3つの実感
スタッフの意欲を維持するためには、心理的に満たされるべき3つの要素があります。
成果の実感:小さな達成を言語化する
自分の努力が目に見える結果に繋がったと感じられるかどうかです。例えば、予約がスムーズに回った、患者様に名前を覚えられたといった、日常の些細な成功をあえて言語化して伝えることが、スタッフの自信を育みます。
成長の実感:スキルの習得だけが成長ではない

新しい技術を覚えることだけが成長ではありません。受付での電話対応が落ち着いてできるようになった、的確な報告ができるようになったといったプロセスの成長を認めることが重要です。1on1ミーティングなどを通じて、過去の本人と比較して良くなった点に光を当てましょう。
貢献の実感:自分の介在価値を認識させる
自分の仕事が誰かの役に立っているという感覚です。あなたの提案で患者様の満足度が上がった、あなたの気遣いでクレームが防げたなど、具体的なエピソードを添えて貢献度を伝えると、スタッフの自己肯定感は飛躍的に高まります。
忙しい診療の合間にできる即効性の高い声かけ術

時間が限られている現場だからこそ、声かけの質が重要になります。ポイントは、具体的、即時、肯定的に伝えることです。
良い声かけの例として、単に「いつもありがとう」と言うのではなく、「今日の急な予約変更への対応、すごく助かったよ」と、行動と効果をセットにして伝えてみてください。声かけのタイミングは仕事の直後がベストです。診療終わりの短い一言が、スタッフにとって明日も頑張ろうと思える活力になります。
評価制度以上に重要な関係性マネジメント
立派な評価制度を作るよりも、日頃の関係性の質を高める方が、少人数の歯科医院では効果的です。
心理的安全性を高める対話の仕組み
月に一度、わずか15分でも良いので1on1ミーティングを実施してみてください。「最近どう?」という何気ない問いかけから始まる対話が、スタッフの悩みや本音を汲み取る貴重な機会になります。
また、院長や事務長が時折スタッフルームに顔を出し、指示ではなく雑談を交えることも効果的です。こうした小さなコミュニケーションの積み重ねが心理的安全性を生み、ミスを隠さない、互いに助け合えるチームの土台を作ります。

チーム全体で意欲を維持する仕組みの構築
個人へのアプローチと並行して、チーム全体が前向きになれる仕掛けも用意しましょう。
目標設定は個人単位ではなく、キャンセル率の改善や患者アンケートの満足度向上など、チーム単位で行うのがお勧めです。目標を達成した際には全員で喜びを共有できる仕組みにすることで、連帯感が生まれます。
また、リピート率などの成果を数値化してスタッフルームに掲示する、あるいは「今月のサポート賞」のようなプチ表彰制度を導入するのも良いでしょう。数字や表彰を通じて自分たちの歩みを可視化することで、チームとしての達成感を継続的に味わうことができます。
まとめと次の一歩
スタッフのモチベーション管理は、特別な制度ではなく日々の文化そのものです。
・やる気を維持する3つの実感(成果、成長、貢献)を意識する
・具体的かつ即時の声かけを習慣化する ・1on1などの対話を通じて関係性の質を高める
・チーム全員で喜びを分かち合える仕組みを持つ
これらの積み重ねが、離職を防ぎ、患者様に選ばれる強い医院を作ります。
Mr.歯科事務長では、こうしたスタッフマネジメントの課題に対し、貴院の状況に合わせた具体的な仕組みづくりをサポートしています。忙しい毎日の中でも、スタッフが自走し、笑顔が絶えない医院を作りたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の解説者

MOCAL株式会社
富平 高行 Takayuki Tomihira
大学を卒業後、テレビ業界でディレクターとして情報番組の制作に10年間携わる。
その後、大手介護関連企業に転職。運営管理から人事マネジメント業務と介護業界での施設長を経て、医療業界にて訪問診療専業のクリニックの事務長となる。
基本的な一連の診療補助業務に携わる一方で労務管理・行政対応・集患活動と幅広く運営業務に従事する。
介護・医療で培った経験を歯科医療業界で役立てたくMOCAL株式会社に入社。

