歯科医院のマネジメント課題解決に役立つ「分割思考」

本コラムでは、歯科医院経営における様々な課題を解決するときに役立つ思考法についてご紹介します。

歯科医院の経営者である院長先生は日々、大小様々な課題に直面しているかと思います。

時には、課題が複雑で、行き詰まってしまうこともあるのではないでしょうか。

東京商工会議所が2023年に行った「中小企業の経営課題に関するアンケート」によると、新たな取り組みを進める中で生じた課題は、顧客ニーズの把握、社員の能力不足、資金力不足などが挙がっており、決して手を付けやすいとはいえず、また漠然としており複雑であることが分かります。

上位にはアイデア出しや企画・戦略策定について課題を感じているといった回答もありましたが、医療業界に限らず事業運営の課題には共通項があります。

1日の大半をプレイヤーとしても働いており、ドラッカーの書籍で指摘されている通り、経営者として重要な仕事に使える時間は1日のうち20分(1日の1.3%)しか捻出できないという院長も多いことと思います。

そこで、歯科医院運営をスムーズに進めるのに役立つ「分割志向」について、ある歯科医院様のでの取り組み事例をもとにご紹介します。

目次

困難は「分割すること」で解決する

「困難は分割せよ」という言葉があります。これは、フランスの哲学者・数学者である、ルネ・デカルトが著書「方法序説」の中で述べた言葉です。文字通り、困難に直面した場合は、問題を対処可能なものへと分割(分解という意味で捉えても良いと考えます)して考えていくことが、課題解決につながるということです。

この思考法を歯科医院での「スタッフが主体的に動ける歯科医院を作りたい」という課題に適用した場合、以下のように分割(分解)して捉えることができます。

  • スタッフを主体的にさせたい目的は何か(Why)
  • 何を行えば達成といえるか(What)
  • いつまでにその状態を目指すのか(When)
  • 具体的にどのような施策を打つのか(How)

この①~④を更に分割して具体的にしていきましょう。

歯科医院運営における「分割思考」の具体例

スタッフを主体的にさせたい目的は何か(Why)

①については「生産性の向上」や「従業員満足度を上げる」目的が多いのではないでしょうか。
院長がなぜやりたいのかの部分ですが、ここを言語化する作業になります。

何を行えば達成といえるか(What)

②については、目標を「定量面」「定性面」で分けて考えることが有効です。そして、目標を追いかける場合、具体的な計測が可能な「定量的目標」を設定することが望ましいと言われています。

業務生産性向上の場合、例えば、受付なら「無断キャンセル率を〇%→◎%へ減らす」、歯科衛生士の場合は「1日担当アポ数 ○枠→◎枠を目指す」等、主体的に動いた結果、何を達成したのかを経営者である院長自らが具体化させることが重要です。

いつまでにその状態を目指すのか(When)

③はスタッフのスキル・経験値にも影響されますが、半年後なのか1年後なのかを事前に区切って設定していくことで、行動の計画が立てやすくなります。この際に意識していただきたいのは「頑張れば達成できる」適度な期間設定にしてあげることです。

目標設定がモチベーション向上につながるのは「頑張れば達成できる」ケースのみと言われています。当たり前のように、毎日の延長で達成する目標や、逆に達成のための条件がハードな場合には有効性はありません。

具体的にどのような施策を打つのか(How)

④については多くの施策が考えられます。例えば、無断キャンセル率の改善であれば、「初診時にキャンセルの影響について患者へ説明をする」「院内にポスターを掲示する」「無断キャンセルが多い方には個別に注意喚起を促す」など、実際に行う具体的なアクションまで落とし込みます。

このように「スタッフが主体的に動ける歯科医院を作りたい」という一見解決が難しいと感じる課題でも、①~④のステップに分割して考えることで、実現可能性が高まります。

「マインドマップ」活用のすすめ

私自身も、お客様の課題に対してどのような具体的なアクションを取ればよいのか、考える時間を常に確保していますが、上述のような「分割思考」を多様しています。

ここで私が活用している方法をご紹介いたします。
分割思考を実践する際には、手書き(アナログ)、パソコン(デジタル)どちらも使うことがありますが、私が使いやすいと感じているのはデジタルの「マインドマップ」ツールです。

すでに活用されている方もいらっしゃるかと思いますが、「マインドマップ」とは、脳内の考えを視覚的に書き出す「思考の表現方法」です。

思考の中心となるキーワード(上記例の場合「生産性の向上」や「従業員満足の向上」など)から、大項目・中項目・小項目と放射状に枝分かれして内容を書いていくことで、抽象的な課題をより具体的に分割して考えることに役立ちます。

また、頭の中で考えるだけでなく視覚的に書き出すことで、以下のようなメリットもあります。

  • 分割作業することで、思考の整理(構造化)ができる
  • 抽象的だった課題が、行動レベルで何をすれば良いかが分かる
  • 可視化されるので、課題を俯瞰して見ることができる

「手帳」活用の思わぬメリット

なお、マインドマップに限らず、「書く」という行為は様々な面でメリットがあります。

特に忙しくされている歯科医院の院長や、人事・マネジメント業務で頭の中が整理できないチーフなどの幹部には特におすすめしたい取組みです。

私は手帳をつけていますが、習慣化すると、何を達成したいのかが明確になります。

計画を具体化し、進捗を可視化できることと、何より大きいのは記録を付けることによって、重要なことを忘れないので、日々の行動が目標に直結しやすくなります。

達成したことを記録できますので、振り返った際に、達成感やモチベーションも得られる感覚を持っています。

20代の頃は手帳をつけることはしていませんでしたが、手帳のメリットを実感してからは習慣化してます。

また、手帳活用法の一つに「ジャーナリング」という手法もありますが、日々の思考や感情を(不安や怒りも含め)紙に書き出すことで、自分自身の考え方・捉え方を客観的に振り返ることができるため、自分が何を考えているのかが言語化出来て、理解が深まると言われています。セルフマネジメントに大変役立ちます。

重要なのは行動すること

ここまで思考整理法についてご紹介してきましたが、歯科医院経営に責任を負われている院長先生にとって最も重要なのは、やはり思考の先にある「行動」でしょう。

そのため役立つのが、今回ご紹介した「分割思考」です。複雑な課題を整理し、具体的な行動(誰が・いつまでに・何をするのか等)を決めることが実行につながります。

なお、医院経営経営における様々なマネジメント課題の解決については、我々「Mr.歯科事務長」が幅広い領域でお手伝いをしています。

採用、労務、生産性の向上、チームビルディング、などのマネジメントの課題解決や、集患、自費向上などマーケティングの課題まで、これまで蓄積されたノウハウを活かし、専門家としてサポートさせていただいています。どうぞお気軽にご相談くださいませ。

みなさまの歯科医院経営のますますの成功、繁栄をお祈りしております。

以上

この記事の解説者

Mr.歯科事務長

白根 将也 Masaya Shirane

東京都出身 血液型O型

大学卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。5年間、ITエンジニアの一員として大手通信会社に常駐。その後、歯科ディーラーで歯科医院・技工所の営業・開業案件に従事。

現在は担当医院で、経営参謀、プロジェクト活動支援、スタッフマネジメントを中心にサポートを行っている。

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