
このコラムでは、歯科医院経営にとって大切な「患者さん(顧客)に支持をされること」、「ファン患者」を獲得できるスタッフを育てる秘訣についてご紹介していきます。

「当院に一度来院いただいた患者様には、ずっと通っていただきたい!」
どの院長先生も一度と言わず、幾度となく考えを巡らせていらっしゃる課題の1つかと思います。
患者様に末永く来院いただくためには、「医院のファン」になる患者様を増やしていくことが大切です。
「医院のファン」と聞くと、そんな患者様いるかな?と思われるかもしれませんが、
- キャンセルなく、予約時間少し前には来院してくれている。
- リコールには欠かさず来院してくれている。
- ご家族全員が来院している。
- 他の患者様を紹介してくれる。
上記のような患者様は、何年も医院に通い続けてくださる「医院のファン」の患者様です。
特に、ご家族全員が来てくださっている場合や、どなたかをご紹介くださるような患者様は医院への信頼と愛情をしっかりとお持ちくださっている方ではないかと思います。
医院としては、こういった患者様がどんどん増えてくださるといいですよね。
来院いただいた患者様に「医院のファン」になっていただくために、一体どんなことができるでしょうか。
もちろん具体的な施策の立案や実行もとても大切な部分ではありますが、その施策を実行するのは他でもないスタッフ達です。
今回はそのスタッフに焦点をあてていきます。
スタッフが主体的に動いていくために

「医院のファンを獲得する」だけではなく、院内で何か新しくルールを作った時など、以下の様なお悩みがでてくることはありませんか。
- 院内MTGで新しいルールを作ったのにどうもうまくいかない。
- 院長ばかり努力している様な気がする。
- スタッフにうまく想いが伝わらない。
いろいろな施策を実行するがするがどうもうまくいかない。決めたことなのにいつのまにかやらなくなってしまっている、というお話は院長先生方からよく伺うものです。
せっかく時間を作ってMTGを行い、いいアイデアも沢山でているはずなのに、一体どうしてうまくいかないということが起こるのでしょうか?
うまくいかないことのひとつの要因として「スタッフが自分事としてとらえていない」という点が挙げられます。
「なんか決まったから」「言われたから」で始まってしまうと、いつの間にかやらなくなってしまうスタッフが増えていってしまいます。
そこで、以下の3つのポイントを上手に活用いただきながら、スタッフ達をしっかりと巻き込んでいきましょう。
感謝や労いの言葉がスタッフのモチベーションを上げる

「ありがとう」「助かるよ」「頑張ってくれているね」
難しい言葉は必要ありません。ぜひ積極的に前述のような言葉をかけてあげてください。
スタッフ面談をしていると「院長に褒めてほしい」という言葉が頻繁に出てきます。
それと同じく院長先生方からは「ありがとうと思っているけど、言葉には出していない。」「長年一緒に働いていて今更恥ずかしい」「言わなくてもわかってくれている」というお話もよくお伺いします。
言わなくてもわかるほどの信頼関係があるスタッフでも、「わかっているけれど言葉で伝えて欲しい」という想いはもっていることが多いと感じます。
実際にスタッフに声をかけることを意識された医院様において、面談の中で「院長が褒めてくれて嬉しい」「最近よく声をかけてもらっている」などの言葉が出てきており、そういったスタッフからは「〇〇を頑張りたい」などの前向きな発言が多くなってきます。
言葉に出して、褒めて・認めることで、「自分は医院に貢献できている」という意識が生まれてきます。
そうなってはじめて「自分事」と捉えてくれるものです。そして「見られている」という安心感から、自分が認められているというスタッフの承認欲求を満たしてあげることが、挑戦してみようとする行動力を生み個人の成長をも促してくれるのです。
スタッフが理解しやすい伝え方のコツ

歯科医院として患者様へのアプローチの仕方を検討される際、
- 「なぜこのアプローチにするのか」
- 「なぜスタッフにこのアプローチをお願いするのか」
- 「なぜ今このタイミングなのか」
など、院長先生がその施策に対してどういう気持ちがあり、その施策をすることで医院がどうなっていって欲しいのかなどを具体的に説明されることがスタッフの理解を深める手助けになります。
ある歯科医院で、スタッフへの事前説明なしに「患者様アンケート」を実施されたことがありました。
結果、スタッフはほとんど患者様にお声をかけることがなく1か月経っても数件のアンケート結果しか集まらない。これに対し面談で詳しく話を聞いていくと
- 「突然アンケートを配れと言われても、チェアタイムも短いのにできない」
- 「アンケートをやる意味がそもそもわからない」
- 「どこにアンケート案内用紙があるのかも知らない」
とスタッフ達からは「知らない」「わからない」「できない」が噴出していました。
そこで、事務長として医院運営をお手伝いしている私からのフォローアップももちろんですが、院内MTGの際に再度院長先生からアンケートを行う意味や意義、その後どう活用されたいのかをきちんと説明いただく時間をとっていただきました。
すると、スタッフ達から次の言葉が出てきました。

「事前に説明して貰えたら最初から迷わなかった」

「そういう理由があるなら、きちんとやらないとダメですよね。」
理由と意図を理解された後からは、積極的なお声かけがはじまり1か月で数多くの患者様の声をいただくことができました。
「なぜ」を説明したときに、「あぁ、そういうことか」とパッと表情が明るくなるスタッフ達はとても多いです。
きちんと理解して責任をもって仕事をしたいと思うスタッフであればあるほど、この「なぜ」を伝えることはとても重要なことです。
特に新しいことについては、知らないこと、想像できないことがスタッフ達の最初の一歩にブレーキをかけてしまいます。
スタッフ達が「やらされる」のか「やる」のかでは、その成果に大きな違いがでてきます。
少し時間がかかったとしてもスタッフ自身がきちんと「腹落ち」することが大切。
「やる」ためには「なぜ」をしっかり理解いただき、自分の問題や課題にし、取り組む自分や成果をあげた先にいる自分を想像していただくことでより自分事としていただくことになり、施策の成功を導くものになってきます。
患者様の声を共有する

患者様アンケートやGoogle口コミなど活用されている歯科医院は多いと思いますが、いただいた患者様の声はスタッフ達に届いていますか?
特にクレームなどのネガティブな情報については「気を付けるように」などと共有されることは多くても、ポジティブな情報については共有されないことが多い様に感じます。
もちろんクレームについては早期対応と改善が必要にはなりますが、患者様からの「嬉しかった」「安心した」などの声は実際に対応しているスタッフにとってとても嬉しい報告です。
よい評価を当たり前とせず、ぜひスタッフ全員で患者様からの喜びの声を共有して医院全体のモチベーションに繋げていきましょう。
患者様の声に加え、院内での感謝の声を共有するものに「Good&New」という時間を設けられる歯科医院様もあります。
実際、私が歯科スタッフだったころ、朝礼で毎回「〇〇さんからこんな言葉をいただいた」「〇〇先生が患者様にこういった姿勢で対応されていて素晴らしかった」などと直近にあった良いことを共有する時間として活用していました。
当番を決めて発言するため、最初は面倒だと感じたこともありましたが継続していくうちに自然と「他者のいいところ探し」が習慣化する様になり、小さなことにも感謝する文化が生まれてきました。
院内スタッフの雰囲気は患者様に必ず伝わります。感謝で溢れた医院で治療を受けるのは、きっと患者様にとっても居心地のよい空間になるのではないでしょうか。
そして、このような取り組みの土台が、自然自然にファン患者を獲得するスタッフを次々と育てていくことにつながります。
まとめ
ご存知の方も多いと思いますが、山本五十六氏の有名な語録に以下のようなものがあります。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
人を育てる、動かすという分野においては、およそ100年以上も前から大切な本質の部分は変わらないということがよくわかります。
ずっと同じことで悩みながらも、実は答えはシンプルなものなのかもしれません。
「なんだか院内のルール運用がうまくいかない」そんな時は是非一度おためしいただいてはいかがでしょうか。
このコラムでは、歯科医院のファンを獲得する実行部隊の主役である「スタッフ」が、自分事としてさまざまな取り組みを進めてくれるように育つために、院長としてどのようなコミュニケーションを行えば効果的か?という秘訣について、私自身の経験を踏まえてご紹介してきました。
男性の院長が多い歯科医院の運営では、女性スタッフとのコミュニケーションの悩みをお持ちのケースが数多くあります。
私たちMr.歯科事務長サービスでは、「女性事務長」による、院内のコミュニケーション強化、補完に関するサポートも行っています。
院内の風通しがよく、調和し、活気のある歯科医院運営、チームビルディンをしたいという院長先生は、お気軽にご相談くださいませ。

この記事の解説者
Mr.歯科事務長
林 知里 Chisato Hayashi
滋賀県出身 血液型AB型
大手食品系企業総務事業部にて受付総務部門を担当後、歯科業界へと転職。
インプラントアシスタントを含むアシスタント業務全般とフロアマネージャーを経験し、その後受付・TCとして15年間歯科医院勤務。
DA・受付・TCスタッフ育成のマネジメント業務にも携わる。
歯科医療分野の知識とコーチングなどスタッフ育成、TCカウンセリングの経験と実績を重ねた後、MOCAL株式会社に入社。