歯科経営の基盤を強くする「5つの着眼点」~好況期も不況期も勝ち続けるために~

目次

はじめに:コロナ禍後の歯科医院経営

新型コロナウイルス感染症の拡大は、私たちの生活に大きな変化をもたらしました。歯科医院も例外ではなく、患者様の行動制限やライフスタイルの変化に対応を迫られました。

コロナ禍においては、テレワークの浸透により新たな患者層を獲得できた医院様も多かった一方、経済的な不安から通院を控える患者様もいらっしゃいました。

行動制限の緩和に伴い、徐々にコロナ禍前の状態に戻りつつありますが、 今後は、ハイブリッド型(テレワークと出社を併用して業務を進める)の働き方が標準になっていく といわれています。

ライフスタイルの多様化が加速する中で、歯科医院はどのように対応していくべきでしょうか?

好況期も不況期も勝ち続けるために

経営の神様と称される松下幸之助氏の言葉に、「好況よし、不況さらによし」というものがあります。好況期は事業を拡大するチャンスですが、不況期は組織の弱点を見直し、より強固な基盤を築くための好機となります。

経済的な先行きが不透明な今こそ、歯科医院経営の基盤を強化することが重要です。本日は、歯科医院の成長を支える5つの着眼点についてお伝えいたします。

1. 患者様満足度

患者様の満足度は、歯科医院の健全性を測る上で最も重要な指標の一つです。患者様からの評価を把握し、改善を続けることで、より良い医療サービスを提供することができます。

患者様の声を収集する

患者様の満足度を把握するためには、積極的に患者様の声を収集する必要があります。

アンケート調査や口コミサイトなどを活用することで、患者様がどのような点に満足し、どのような点に不満を感じているのかを把握することができます。

例えば、定期的なアンケートを実施し、治療内容やスタッフの対応、院内環境などについて評価してもらう方法があります。

また、Googleマイビジネスなどの口コミサイトに寄せられた意見を定期的にチェックすることも重要です。最近では、患者様向けに専用のLINEアカウントを開設し、チャット形式で意見を収集する歯科医院も増えています。

患者様の声を分析する

収集した患者様の声は、しっかりと分析することが重要です。

どのような意見が多く寄せられているのか、どのような傾向があるのかを把握することで、改善すべきポイントが見えてきます。

例えば、アンケート結果を年齢層や性別ごとに分析することで、それぞれの層に合わせたサービス提供の必要性が見えてくるかもしれません。

また、自由記述欄に寄せられた意見を分析することで、定量的なデータからは見えてこない潜在的なニーズを把握できる可能性もあります。

改善策を実行する

分析結果に基づき、具体的な改善策を実行しましょう。

例えば、待ち時間の短縮、院内環境の改善、スタッフの接遇改善など、患者様の満足度向上につながる施策を検討しましょう。

待ち時間については、予約システムの導入や診療体制の見直しなどを検討することができます。院内環境については、清掃の徹底やBGMの選定、アロマの導入など、患者様がリラックスできる空間作りが重要です。

スタッフの接遇については、研修の実施やマニュアルの作成などにより、質の高い接遇を目指しましょう。

定期的な評価

改善策を実行したら、その効果を定期的に評価しましょう。

アンケート調査などを実施することで、改善策が実際に患者様の満足度向上に繋がっているかどうかを確認することができます。

例えば、改善策実施後に再度アンケートを実施し、以前の結果と比較することで、改善効果を測定することができます。

効果が見られない場合は、改善策の内容を見直す必要があるでしょう。

2. 収益性

歯科医院の経営を安定させるためには、収益の確保が不可欠です。売上高、原価、支出などを分析し、適切な利益を上げているかどうかを判断しましょう。

収益目標を設定する

まずは、年間の収益目標を設定しましょう。

目標を明確にすることで、日々の診療や経営活動のモチベーションを高めることができます。目標設定は、過去の診療実績や経営状況を分析した上で、現実的な数値を設定することが重要です。

また、目標達成のための具体的な計画を立て、定期的に進捗状況を確認しましょう。

売上分析

毎月の売上高を分析し、前年同月比や目標達成率などを確認しましょう。

売上が伸びている場合は要因を分析し、さらに売上を伸ばすための施策を検討しましょう。

売上が減少している場合は、その原因を突き止め、早急に対策を講じる必要があります。売上分析には、診療報酬明細書や会計ソフトなどのデータを用いることができます。

また、患者一人当たりの売上や診療科目ごとの売上などを分析することで、より詳細な分析を行うことができます。

費用分析

人件費、材料費、家賃などの費用項目を分析し、無駄な支出がないかを確認しましょう。

コスト削減できる点があれば、積極的に改善に取り組みましょう。費用分析には、会計ソフトや家計簿などのデータを用いることができます。また、水道光熱費や通信費などの固定費を見直し、コスト削減を図ることも重要です。

収益改善策の実施

分析結果に基づき、収益改善策を実行しましょう。

例えば、自費診療の導入、新患獲得のための広告展開、予約システムの導入など、収益向上につながる施策を検討しましょう。

自費診療を導入する場合は、患者様への丁寧な説明が重要です。新患獲得のための広告展開は、地域特性やターゲット層を考慮して行う必要があります。

予約システムは、患者様の利便性向上だけでなく、受付業務の効率化にも繋がります。

定期的なモニタリング

収益状況は定期的にモニタリングし、改善策の効果を検証しましょう。

必要があれば、目標や施策を修正していくことも重要です。

モニタリングには、月次決算書や経営分析レポートなどを活用することができます。また、税理士などの専門家と定期的に相談することで、より客観的な視点で収益状況を把握することができます。

3. 診療実績指標

予約数、患者数、新患数、自費率などの診療実績を把握することで、医院の現状を客観的に評価することができます。

予約状況の把握

毎日の予約状況を把握し、予約の空き状況やキャンセル状況などを確認しましょう。

予約システムなどを活用することで、効率的な予約管理が可能になります。

予約状況を把握することで、診療時間の調整やスタッフの配置などを効率的に行うことができます。また、キャンセルが多い時間帯や曜日などを分析することで、キャンセル対策を検討することができます。

患者数の推移

新規患者数、再来院患者数などを分析し、患者数の推移を把握しましょう。

患者数が増加傾向にある場合は、その要因を分析し、さらに患者数を増やすための施策を検討しましょう。

患者数が減少傾向にある場合は、その原因を突き止め、早急に対策を講じる必要があります。患者数の推移を把握することで、医院の成長度合いを測ることができます。

また、地域特性や競合状況などを考慮することで、より効果的な集患対策を検討することができます。

自費率の推移

自費診療の割合を示す自費率は、収益性に大きく影響する指標です。

自費率の推移を把握し、目標達成に向けた取り組みを行う必要があります。自費率向上のためには、患者様への丁寧な説明やカウンセリングが重要です。また、自費診療のメリットを分かりやすく伝えるための資料やパンフレットなどを用意することも効果的です。

治療中断率の把握

治療を途中で中断してしまう患者様の割合を示す治療中断率は、患者様の満足度と密接に関係しています。

治療中断率が高い場合は、その原因を分析し、患者様とのコミュニケーションを強化するなど、治療中断を防止するための対策を検討しましょう。

治療中断の原因としては、治療費や治療期間に対する不安、通院の負担などが考えられます。患者様一人ひとりの状況に合わせて、丁寧な説明やサポートを行うことが重要です。

4. スタッフの満足度

スタッフの満足度は、患者様の満足度にも大きく影響します。スタッフが働きがいを感じ、モチベーション高く仕事に取り組める環境を作ることは、医院全体の活性化に繋がります。

良好なコミュニケーション

スタッフ間のコミュニケーションを円滑にするために、定期的なミーティングや懇親会などを開催しましょう。

風通しの良い職場環境を作ることで、スタッフの意見交換を促進し、問題解決をスムーズに行うことができます。

例えば、朝礼や終礼で情報共有を行う場を設けたり、コミュニケーションツールを導入したりするのも有効です。また、スタッフ同士が気軽に相談できる雰囲気作りも大切です。

教育研修の充実

スタッフのスキルアップを支援するために、外部研修への参加や資格取得支援制度などを導入しましょう。

スタッフの成長を促すことは、医院全体のレベルアップに繋がります。歯科医療は常に進歩しています。

スタッフのスキルアップを支援することで、患者様に最新かつ質の高い医療を提供することができます。また、スタッフの成長意欲を高めることは、定着率向上にも繋がります。

働きがいのある環境づくり

仕事とプライベートのバランスを重視し、休暇制度や福利厚生などを充実させましょう。

スタッフが安心して働ける環境を作ることで、定着率向上に繋がります。

例えば、育児休暇や介護休暇制度を導入したり、フレックスタイム制や時短勤務制度を導入したりするのも有効です。また、院内保育所や託児所を設けることで、子育て中のスタッフが安心して働ける環境を作ることもできます。

評価制度の導入

スタッフの頑張りを正当に評価できるような評価制度を導入しましょう。

目標達成やスキルアップに対して適切な評価を与えることで、スタッフのモチベーション向上に繋がります。評価制度は、明確な基準と透明性の高い運用が重要です。

また、定期的な面談などを通して、スタッフ一人ひとりとコミュニケーションを図り、評価に対するフィードバックを行うことも大切です。

5. 診療技術や設備の充実度

最新の診療技術や設備を導入することで、患者様に質の高い医療サービスを提供することができます。また、スタッフにとっても働きやすい環境を整えることができます。

最新技術の導入

歯科医療は日々進歩しています。最新の技術や治療法を積極的に導入することで、患者様に最善の医療を提供することができます。

学会やセミナーに参加するなど、常に新しい情報にアンテナを張ることが重要です。例えば、デジタルレントゲンやCTなどの画像診断装置、レーザー治療器、マイクロスコープなどの最新設備を導入することで、より精密な診断や治療が可能になります。

設備の更新

診療設備は、定期的にメンテナンスや更新を行い、常に最適な状態を維持しましょう。

最新の設備を導入することで、診療効率の向上や患者様の負担軽減に繋がります。

例えば、診療ユニットや滅菌器などの設備は、定期的にメンテナンスを行うことで、故障のリスクを減らし、長持ちさせることができます。また、最新の設備は、省エネ性能や操作性に優れているものが多く、スタッフの負担軽減にも繋がります。

院内環境の整備

清潔感のある院内環境を維持することは、患者様に安心感を与えるだけでなく、スタッフのモチベーション向上にも繋がります。

定期的な清掃や消毒はもちろんのこと、快適な空間を提供できるよう、内装や設備にも気を配りましょう。

例えば、待合室には、ゆったりとくつろげるソファや雑誌などを用意しましょう。また、診療室は、清潔感のある明るい空間にすることが重要です。

まとめ

上記の5つの着眼点を総合的に判断することで、歯科医院の健全性を把握することができます。

それぞれの視点において、現状を分析し、改善策を実行することで、より強固な歯科医院の経営基盤を築くことができます。

その他にも、地域特性や競合状況などを考慮しながら、自院にとって最適な経営戦略を策定していく必要があります。

患者様にもスタッフにも、自信をもって日々の診療を提供できる、してもらえる医院を目指しましょう。

この記事の解説者

Mr.歯科事務長

信田 学 Manabu Nobuta

神奈川県出身 血液型O型

歯科向け予約管理システムの営業として日本全国の歯科医院経営の仕組み化を支援してきた経験を元に、Mr.歯科事務長でも多角的な施策の立案・実行を持ってお客様をサポート。

「ありがとうの数No.1」をモットーに、院長の描く理想のゴールをともに実現する参謀役かつ実務推進者として、業績向上マーケティング・院内仕組みづくり・経営の立て直し、経営相談役などを担い、数多くの院長の個性や強みを活かしたビジョンの実現・クリニックのオリジナルの発展繁栄に貢献。

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