「採用した人が思ったような仕事をしてくれない」 「面接では良い印象だったのに、実際には合わなかった」 等のご相談を院長や医院の採用担当者からよく伺います。 ミスマッチを防ぐためにも面接の場で、「自院が求める人材像にフィットする応募者」をできる限り見極めることが重要です。
今回は、採用の中でも特に重要な「面接」に焦点を当て、ご説明いたします。採用や新人スタッフの定着率などでお悩みの院長はぜひご参考にください。
面接官4つの心得
面接は、単なる「会話」ではなく、医院の未来を左右する重要な場です。しかし、面接官の経験や感覚だけに頼った面接では、応募者の本質を見抜くことは困難です。ここでご紹介する4つの心得は、そうした主観に陥りがちな面接から脱却し、客観的かつ効果的に人材を見極めるための土台となるものです。
これを実践することで、採用の精度は格段に向上します。
1.応募者情報の事前確認を、時間を取って行う
面接時間は30分~60分程度という限られた時間しかありません。 この限られた時間の中で、採用するか否か判断するためにも、事前準備として履歴書等からどのような応募者か想像し、質問内容をあらかじめ考えておくことで、面接の場で深堀し、より正確に応募者を見極めることができます。
<ポイント>
- 履歴書は事前に入手しておく
- 履歴書を元に、疑問に感じたこと、掘り下げて聞きたいことは事前に考えておく
2.過去の行動を中心にオープンクエスチョンで質問する
「はい」か「いいえ」で答えられるような、二者択一式の質問となる「クローズドクエスチョン」は面接に向きません。 誰でも必ず良い印象を与える方を選択するからです。 また未来の話や、考え方も偽りの回答が可能なため適正な人材か判断が難しくなります。
そのため、過去の行動を中心に応募者の経験やスキルを探る方法が望ましいです。基本的に、人は同じ行動を繰り返す可能性が高いので、これまでの仕事への取組み内容や考え方などを詳細に話してもらうことで、どのような方かより見極められやすくなります。
3.面接表を活用する
面接を数多く経験した百戦錬磨の面接官でも、面接時には必ず面接表を使用します。 100人面接を経験していても、同じ基準で人材を見極めるためにも必ず面接行を活用しましょう。 面接表をお持ちでない場合は、後述する面接フローを参考にしていただき、医院に合わせ作成していただくことをおすすめします。
4.なるべく一人で採用の判断をしない
可能であれば、面接は複数人で実施することをおすすめします。 もし院長一人で面接を行う場合は適性検査を活用するのも一つです。適性検査のみで採用の判断はできませんが、面接での判断に迷いがあった場合は採用/不採用の判断材料として活用できます。
最近はWEB検査で気軽に受験もでき、ストレス耐性等の見極めも可能なので便利です。1名あたり1000円以下のコストで受験可能なサービスも出てきています。
面接の流れ
ここからは具体的に面接の流れに関してお話ししてまいいます。 最低限これらのポイントを押さえて質問すれば、採用するべき人材か採用してはいけない人材かの判断を、より正確にすることができます。
冒頭:アイスブレイク(3分)
面接の冒頭は応募者が本来の自分を出しやすいように、意図的に緊張をほぐす時間を作りましょう。面接官が穏やかな表情で話しかけ、選考とは直接関係のない雑談をすることで応募者は安心し、その後の対話がよりスムーズになります。応募者の本質を見極めるための大切な準備段階です。
<ポイント>
応募者の「笑顔を引き出せたら」面接開始
<質問例>
- 本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。道は迷いませんでしたか?
- 今日は寒いですね。お越しいただくのに大変ではなかったですか?
自己紹介(3分)
面接は多くの場合、この自己紹介からスタートします。必ず聞かれると分かっている質問に対して、応募者がどれだけ意欲を持って準備してきたかを判断するための重要な指標となります。話がまとまっていない、あるいは長すぎるといった場合、準備不足や報連相の能力への懸念が生じます。
<ポイント>
- 事前に話す準備をしているか見極める
- 短い時間で簡潔に分かりやすく話せているか
経歴確認(5分)
応募者の経歴は将来の働きぶりを予測するための重要な情報源です。特に短期間での転職を繰り返している場合や、経歴に一貫性が見られない場合は注意が必要です。その背景にある理由を丁寧にヒアリングし、自院で同じような問題が起こらないか、長期的に活躍してくれる人材かを見極めるための重要なステップとなります。
<ポイント>
- 転職経験がある場合、退職理由は意図があり明確か?
- 1年に2回以上の転職、試用期間中での退職は要注意
志望動機(5分)
応募者のこれまでの経験が、当院でどのように活かせるのか、そしてなぜ「他の医院ではなく当院を選んだのか」を具体的に問います。この質問を通じて、応募者が事前に当院の理念や特徴をどれだけ理解しているか、そしてここで働きたいという熱意の本気度を測ることができます。
<ポイント>
- 現職から転職する明確な理由があるか否かを確認
- 応募者のキャリアビジョンと医院の方向性が合致しているか?
- 他院ではなく、当院を選んだ明確な理由があるか?
スキル・実務経験(10分)
面接時に特に大切な項目になります。 この内容を確認した上で、次の「問題解決能力・対応力」に繋げる必要があります。
<ポイント>
- 過去の経験を元に成果に繋がったことを話してもらうこと
- 能動的に行動できているか
- 数値や成果等が具体的に出てくるか?
- チームワークを通じての経験があるか?
- リーダー経験はあるか?
<質問例>
- これまでの業務(学業・アルバイト可)で特に成果をあげた経験を教えてください
- 取り組んだことのあるプロジェクトや課題解決の事例を挙げてください
- これまでチームで協力して成果を出した経験を教えてください
- チーム内でのあなたの役割は何でしたか?
問題解決能力・対応力(5分)
「スキル・実務経験」の内容において、困難だったことや失敗した経験、どのようなことを学んだかを確認します。
<ポイント>
- 課題に対する論理的思考や柔軟な対応力があるか
- 優先順位などは問題ないか
- 失敗から学び、成長する姿勢があるか
<質問例>
- 困難な状況に直面した際、どのように対応しましたか?
- チーム内で意見が対立したとき、どのように対処しましたか?
- 失敗した経験とそこから学んだことを教えてください
長所と短所(5分)
この質問は面接でよく聞かれる質問のためある程度、回答が事前準備されている場合もあります。そのため 質問の仕方を「周りの友人や家族からどのように言われているか?」と聞くことにより、その応募者の本当の性格面が見えてきます。 また、その後にご自身ではどう思われるかを聞くことにより、自己評価がしっかりできているかの確認も可能になります。
<ポイント>
- 長所が業務に活かせるものであるかを確認
- ここで最も大切なのは短所をどのように克服しようとしているのかを確認
- ただし、短所のみを聞くのはNG
<質問例>
- ご自身の長所と短所に関して、友人や家族からどのように言われることが多いですか?
- ご自身ではどのように思われますか?
未来のヒアリング(3分)
応募者が将来どのようなスキルや専門性を身につけ、成長していきたいと考えているかを聞くことで、その方の学習意欲や向上心の高さを測ります。「どうとでも言える」部分ではありますが、その回答の具体性や熱量から、仕事に対する価値観や主体性を垣間見ることができます。医院が提供できるキャリアパスと本人の希望が合致しているかを確認し、入職後のエンゲージメントを高めるための重要な質問です。
<質問例>
- 将来、どのようになりたいと思いますか?
- 今後、どのようなスキルを身に付けたいですか?
希望条件等の確認(3分)
給与や勤務時間、休日などの労働条件は、入職後の満足度に直結する非常に重要な項目です。面接の終盤でこれらの条件を丁寧にすり合わせることで、採用後の「こんなはずではなかった」というミスマッチを未然に防ぎます。応募者の希望と医院側が提示できる条件に相違がないか、最終的な意思確認の場としましょう。
医院の紹介と仕事内容の伝達(5分)
医院の理念や実際の仕事内容をお伝えします。 ここをしっかりお話しすることで、採用後すぐに退職につながることを防ぐことができます。 理念と仕事内容のお話しの後、必ず応募者に再度お気持ちを確認しましょう。 また、ドレスコードや給与支払い日等もお話ししておくとさらに実際に働くイメージが湧きやすくなります。
逆質問(5分)
応募者が抱える最後の疑問や不安を解消し、入職後のミスマッチを防ぐための大切な機会です。面接官は、どんな些細なことでも質問しやすい雰囲気を作り、誠実に回答することで、医院の透明性や誠実な姿勢を示すことができます。「特にありません」という回答は、興味が薄いか、あるいは質問しにくい雰囲気を感じ取っているサインかもしれません。
面接NG質問例
最後に、面接時にしてはいけない不適切な質問例に関して紹介します。 もしかすると、何気なく質問していることもあるかもしれません。 不適切な質問は避け、面接を実施しましょう。
- 出生地はどこですか?/生まれてから、ずっと現住所に住んでいるのですか?
- 本籍に関わることは就職差別につながる可能性があるのでNG
- あなたのおうちは国道○○号線(○○駅)のどちら側ですか?
- 面接時に住宅環境に関する質問はNG
- あなたの家の家業は何ですか?/ 配偶者の職業は何ですか?/ 長男とのことですが、家業を継ぐ予定ですか?
- 家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問はNG
- あなたの信条としている言葉は何ですか?/尊敬する人物を言ってください/あなたは、どんな本を愛読していますか?
- 思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問はNG
- 結婚や出産後も働き続けようと思っていますか?/結婚の予定はありますか?
- 性別を理由(または前提、背景)とした質問は、男女雇用機会均等法の趣旨に違反するためNG
まとめ
本コラムでは、採用面接における4つの心得と具体的な面接フロー、面接NG質問例に関してご紹介しました。 面接は採用フローの中でも重要です。適切な面接を実施し、医院に合った人材を確保できるように参考にしていただければと思います。
採用戦略の改善や面接のサポートにお悩みの方は、「Mr.歯科事務長」のサービスをご活用ください。 医院様に合わせた面接表の作成、面接官として同席することも可能です。 詳細は公式サイトをご覧ください。
この記事の解説者

MOCAL株式会社
丸山 優 Yu Maruyama
大学卒業後、大手家電量販店にて販売員、コーナー責任者を務め、接客スキルとお客様の立場になって徹底的に考える大切さを学ぶ。その後、営業職を経て、楽器や音楽教室を展開する大手企業に転職。
関西・東海地区11店舗のエリアマネージャーとして、店舗運営、店長/スタッフ教育、各種プロジェクト責任者、マーケティング研修、新店舗立ち上げ等、幅広いマネジメント業務に従事。
個人販売実績全国2位(約2000名中)、オリジナルモデル販売比率全国1位など複数表彰歴あり。
これまで培ったマネジメントスキルとサービス精神を活かし、より社会に貢献したい想いからMOCAL株式会社に入社。人事マネジメントとプロジェクトチーム運営を強みに現在活躍中。